スピノザのエチカの関連著作
デカルト『省察』
『エチカ』を理解する上で欠かせないのが、デカルト哲学、とりわけ『省察』です。スピノザはデカルト哲学を批判的に継承しており、『エチカ』の多くの箇所でデカルトの思想との共通点と相違点を見出すことができます。
例えば、『省察』でデカルトは、「我思う、ゆえに我あり」という有名な命題を通じて、自己意識の確実性を論じました。この命題は、我々が思考しているという事実自体が、我々の存在の確実な根拠となることを示しています。スピノザもまた、人間の認識の出発点を「観念」に置き、そこから「実体」へと遡るという思考の道筋を採用しています。
ホッブズ『リヴァイアサン』
トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』もまた、『エチカ』と関連の深い著作です。ホッブズは、自然状態における人間は自己保存の欲求に突き動かされ、絶えず闘争状態にあると考えました。この状態から脱却するために、人々は社会契約によって自然権の一部を放棄し、絶対的な主権者である国家に統治を委ねると論じました。
スピノザはホッブズと同様に、人間の行動の根底には自己保存の欲求があると考えた点で共通しています。しかし、ホッブズが絶対的な主権者を擁護したのに対し、スピノザは理性の自由を重視し、民主的な国家体制を支持しました。
ライプニッツ『モナドロジー』
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツの『モナドロジー』も、『エチカ』と比較検討する上で重要な著作です。ライプニッツは、世界は無数のモナドと呼ばれる精神的な実体から構成されていると主張しました。モナドはそれぞれ独立しており、他のモナドと直接的な相互作用はありませんが、神のあらかじめ定めた調和によって、あたかも相互作用しているかのように見えます。
スピノザは、ライプニッツとは対照的に、神と世界を同一視する汎神論的な立場をとりました。また、ライプニッツがモナドの多元論を主張したのに対し、スピノザは単一の実体である神のみが存在すると考えました。