## スピノザの『エチカ』の思考の枠組み
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公理的・幾何学的論証方法
『エチカ』は、ユークリッド幾何学を手本とした公理的方法で書かれています。これは、まず
* **定義**: 用語の意味を明確に規定する。
* **公理**: 自明な真理として前提する命題
を提示し、そこから論理的な演繹によって命題を導き出す方法です。スピノザは、この厳密な方法によって、人間の感情や行動、そして神の本質にいたるまでを、数学のように体系的に説明しようと試みました。
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実体、属性、様態
スピノザ哲学の根幹をなすのが、「実体」「属性」「様態」の三つの概念です。
* **実体**: それ自身によって存在するもの、他に依存せずに存在するもの。
* **属性**: 実体の本質を構成する、実体のあり方を示すもの。
* **様態**: 実体の変様、属性が具体的な形をとったもの。
スピノザは、神を無限の実体とし、思考と延長を神の属性とします。そして、私たち人間を含む森羅万象は、神の属性の様態として存在すると考えます。
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コナトゥスと神への知的愛
スピノザは、すべてのものは自己保存の努力、「コナトゥス(conatus)」を持っていると主張します。人間の場合、このコナトゥスは、自己の
* **感情**: コナトゥスの増減
* **行動**: コナトゥスを増加させようとする努力
に現れます。
そして、人間の究極の目的は、神への「知的愛」に至ることです。これは、神を理性によって真に認識し、神との一体感を体験することによって得られる、永遠の幸福の境地です。
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これらの概念は相互に関連し合いながら、『エチカ』全体を貫く思考の枠組みを形成しています。