スティーヴンスンのジーキル博士とハイド氏の原点
ロバート・ルイス・スティーヴンソンについて
ロバート・ルイス・スティーヴンソンは、1850年11月13日、スコットランドのエディンバラで生まれました。彼は小説家、詩人、エッセイスト、旅行作家として活躍し、「宝島」、「誘拐」などの冒険小説で特に有名です。スティーヴンソンは、結核を患い、温暖な気候を求めて転地生活を送りながら創作活動を続けました。そして、1894年12月3日、サモアで44歳の若さで亡くなりました。
ジーキル博士とハイド氏の着想
スティーヴンソン自身は、「ジーキル博士とハイド氏」の着想について、次のように語っています。
> ある夜、悪夢にうなされました。それは、いまでもぞっとするほど鮮明に覚えています。[…] 目が覚めたとき、私はすでに物語の二つの場面を思い描いていました。
スティーヴンソンは、この夢の内容を詳しく語っていませんが、後に妻のファニーに宛てた手紙の中で、「人間の二重性」をテーマにした物語を書こうとしていたことを明かしています。
当時の時代背景
「ジーキル博士とハイド氏」が書かれた19世紀後半のイギリスは、ヴィクトリア朝と呼ばれる時代でした。ヴィクトリア朝は、産業革命による経済発展の一方で、貧富の格差や階級社会の矛盾が深刻化し、人々の間には、理性と進歩を信じる一方で、不安や恐怖も渦巻いていた時代でした。
二重人格
「ジーキル博士とハイド氏」のテーマである「二重人格」は、当時、医学や心理学の分野で注目され始めていた現象でした。特に、フランスの神経学者ジャン=マルタン・シャルコーによる「ヒステリー」の研究や、フランスの心理学者ピエール・ジャネによる「潜在意識」の概念は、人間の心の奥底に潜む、もう一つの人格の存在を想起させました。