## スチュアートの政治経済学の諸原理の発想
ジェームズ・ミルへの傾倒と批判的継承
ジェームズ・ミルは、スチュアートにとって人生の師ともいうべき存在であり、その影響は政治経済学の分野においても顕著に見られます。ミルは、ベンサムの功利主義を基盤とした厳格な経済学説を展開し、政府の役割を最小限に抑えるべきだと主張しました。スチュアートはミルの影響を受けながらも、その思想を批判的に継承し、独自の政治経済学を構築していきます。
リカード経済学の深化と発展
スチュアートは、デヴィッド・リカードの経済学を深く研究し、その理論体系をさらに発展させました。リカードは、労働価値説に基づいて分配の法則を解明しようと試みましたが、スチュアートは、リカードの分析をさらに深化させ、賃金、利潤、地代の三つの分配要素の関係をより精緻に分析しました。また、リカードが重視した自由貿易の原則を継承し、国際貿易の重要性を説きました。
功利主義に基づく社会改革への志向
スチュアートは、ミルの影響から功利主義的な思想を抱き、社会全体の幸福の増進を政治経済学の ultimate goal と捉えていました。 彼は、自由競争を基本原則としながらも、貧困や不平等といった社会問題に対して積極的に介入する必要性を説き、政府による教育の普及や労働者階級の生活水準向上のための政策を提唱しました。
歴史的発展段階に応じた政策の必要性
スチュアートは、社会経済は常に変化発展していくものであり、画一的な政策を適用することは適切ではないと考えていました。彼は、社会の発展段階に応じた政策の必要性を主張し、後進国においては、政府による積極的な介入が必要となる場合もあることを認めました。このような考え方は、後の発展経済学の先駆的なものと言えるでしょう。