## スチュアートの政治経済学の諸原理の技法
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帰納法
スチュアートは、当時のイギリス経済の観察に基づいて、帰納的な手法を用いて経済理論を構築しました。彼は、具体的な経済現象から一般的な法則を導き出すことを試みました。例えば、彼は富の分配に関する理論を展開する際に、当時のイギリス社会における地主、資本家、労働者の関係を観察し、そこから賃金、利潤、地代の決定原理を導き出そうとしました。
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演繹法
帰納的な手法に加えて、スチュアートは演繹法も用いました。彼は、いくつかの基本的な前提から出発し、論理的な推論によって経済現象を説明しようとしました。例えば、彼は人間の経済活動を「快楽の追求と苦痛の回避」という単純な原理に還元し、そこから需要と供給の法則、価値の理論などを導き出しました。
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歴史的・制度的分析
スチュアートは、経済現象を歴史的・制度的な文脈の中で捉えることの重要性を認識していました。彼は、経済法則は普遍的なものではなく、特定の歴史的条件や社会制度に規定されると考えました。例えば、彼は当時のイギリスにおける貧困問題を分析する際に、救貧法などの社会制度が貧困を固定化させていると批判しました。
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比較静学
スチュアートは、経済変数が均衡状態から別の均衡状態へどのように移行するかを分析する、比較静学と呼ばれる手法を用いました。彼は、ある経済変数の変化が他の変数にどのような影響を与えるかを、段階的に追跡しようとしました。例えば、彼は技術進歩が賃金や利潤に与える影響を分析する際に、比較静学を用いています。
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倫理的考察
スチュアートは、経済学を単なる「富の科学」とは考えていませんでした。彼は、経済活動の究極的な目的は人間の幸福であると考え、倫理的な観点から経済問題を論じました。例えば、彼は自由放任主義的な政策を批判し、政府は社会正義を実現するために積極的に介入すべきだと主張しました。