## スチュアートの政治経済学の諸原理の思索
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富の定義と生産について
J.S.ミルは、人間の労働によって自然の素材に付加されたあらゆる有用かつ希少なものを「富」と定義し、人間の欲望を満たすものを「有用性」、供給が需要に比べて少ない状態を「希少性」とした。彼は、富の生産は労働によってのみ行われ、労働は自然の力と資本の助けを借りて効率的に行われると考えた。
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生産要素と分配について
ミルは、生産の三要素として、労働、資本、土地を挙げた。資本は過去の労働の蓄積であり、土地は自然の贈り物とみなした。そして、生産された富は、賃金(労働の報酬)、利潤(資本の報酬)、地代(土地の報酬)の三つに分配されると考えた。
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価値論について
ミルの価値論は、需要と供給によって価格が決定されるという古典派経済学の伝統的な考え方を継承している。しかし、彼は、生産費が供給に影響を与えることを重視し、特に、土地のように供給が制限されている財の場合、地代が価格に大きな影響を与えることを指摘した。
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国際貿易論について
ミルは、国際貿易においても、比較優位に基づいて各国が最も得意とする財を生産し、貿易を行うことで、全体の利益が最大化されると主張した。これは、リカードの比較生産費説を発展させたものであり、自由貿易の理論的根拠となった。
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政府の役割について
ミルは、基本的には自由放任主義の立場をとっていたが、市場の失敗が起こる可能性も認めていた。例えば、教育や貧困対策など、市場メカニズムだけでは十分に供給されない公共財については、政府が介入する必要があると考えた。