## スチュアートの政治経済学の諸原理が扱う社会問題
###
富の分配に関する問題
スチュアートは、当時のイギリス社会が抱える貧富の格差の拡大を深刻な問題と捉えていました。産業革命の進展は、確かに国全体の富を増大させましたが、その恩恵は一部の資本家層に集中し、労働者階級には貧困と厳しい労働環境しか残されていない状況でした。
スチュアートは、労働者の生活水準の向上なくして、真の社会の発展はあり得ないと考えました。彼は、労働者階級の貧困の原因を、労働市場における不平等な力関係に求めました。資本家階級は、その経済力によって労働者を低賃金で長時間労働に従事させることが可能であり、労働者は生活のためにそれを受け入れざるを得ない状況でした。
スチュアートは、この問題を解決するために、政府による積極的な介入の必要性を訴えました。彼は、労働組合の活動を奨励し、労働時間の規制や最低賃金の導入などの政策を通じて、労働者の権利保護と生活水準の向上を図るべきだと主張しました。
###
人口問題
スチュアートは、マルサスの影響を受け、人口増加が経済成長を阻害する要因になり得ると考えていました。当時のイギリスでは、産業革命による経済発展と医療の進歩によって人口が急増していました。スチュアートは、人口増加が続けば、食糧不足や資源の枯渇が生じ、経済成長が鈍化し、貧困が拡大すると懸念しました。
彼は、この問題に対処するために、道徳的抑制の重要性を説きました。具体的には、晩婚化や家族計画の普及を通じて、人口増加を抑制する必要があると主張しました。ただし、スチュアートは、マルサスのような悲観的な見通しを持っていたわけではありません。彼は、教育の普及や技術革新によって、人口増加を抑制しつつ、経済成長を維持できる可能性もあると考えていました。
###
社会の進歩と政府の役割
スチュアートは、個人と社会の自由を重視する立場から、政府の役割は限定的であるべきだと考えました。しかし、上記の社会問題に対処するためには、政府の積極的な介入が必要不可欠であるとも認識していました。
彼は、政府は、市場メカニズムの欠陥を是正し、社会全体の利益を促進するために、教育の普及、社会福祉制度の充実、労働条件の改善、環境保護など、様々な分野において積極的な役割を果たすべきだと主張しました。
スチュアートは、政府の介入は、個人の自由を侵害するものではなく、むしろ個人がその能力を最大限に発揮できるような条件を整えるために必要不可欠であると考えていました。