スターリンのマルクス主義と民族問題を読んだ後に読むべき本
マルクス主義と民族問題:スターリンを超えて考える
スターリンの『マルクス主義と民族問題』は、民族問題に対するマルクス主義的分析の古典として、またソ連の民族政策の基礎を築いた文献として広く読まれてきました。しかし、スターリンの著作は、その後の歴史的展開や思想的進展を踏まえて批判的に検討する必要があります。そこで、本書を読み終えた方には、スターリンの枠組みを超えて、マルクス主義と民族問題の関係について、より深く、多角的に考察を深めていただけるような一冊をお薦めします。
その一冊とは、ベネディクト・アンダーソンの著した『想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行』です。
アンダーソンは、本書で「国民」や「民族」といったものが、決して永遠不変の実体ではなく、近代において人為的に「想像」された共同体であることを論証しています。彼は、印刷資本主義の台頭、宗教の衰退、言語の均質化といった要因が複雑に絡み合い、人々の間に共通の言語、文化、歴史を共有しているという意識を生み出し、それが「国民」という想像の共同体を形成していったと分析します。
スターリンは、民族を客観的な特徴(言語、領土、経済生活、心理的構造)によって規定されるものとして捉えていましたが、アンダーソンの分析は、民族というものが、そうした客観的な要素だけでなく、人々の主観的な「想像」によって大きく左右されることを明らかにしています。
アンダーソンの視点は、スターリンの民族理論が抱えていた限界、すなわち民族を静態的なものとして捉え、その流動性や可変性を十分に考慮していなかった点を浮き彫りにするでしょう。また、国民や民族という概念が、近代社会における権力構造やイデオロギーと密接に結びついていることを明らかにすることで、民族問題に対するより批判的で多層的な理解を促してくれます。