## スターリンのマルクス主義と民族問題の評価
スターリンによる民族の定義
スターリンは、著作「マルクス主義と民族問題」の中で、民族を「歴史的に形成された、言語・領土・経済生活・心理機構の共通性によって特徴づけられる安定した人間の共同体」と定義しました。これは、客観的な要素（言語、領土、経済）と主観的な要素（心理機構、すなわち文化や国民意識）の両方を重視した定義となっています。
肯定的な評価
スターリンの民族理論は、当時のソビエト連邦の多民族国家建設において、一定の役割を果たしました。彼は、すべての民族が自決権を持つと主張し、民族の文化と言語の保持を支持しました。これは、帝政ロシア時代に行われていたロシア化政策からの脱却を意味し、被抑圧民族の権利向上に貢献した側面があります。
批判的な評価
一方で、スターリンの民族理論は、以下のような批判に直面しています。
* **民族の定義の曖昧さ:** スターリンの民族定義は、客観的な要素と主観的な要素を組み合わせているため、どの要素を重視するかによって民族の範囲が変化するという曖昧さを抱えています。
* **民族主義の利用:** スターリンは、自決権を認めながらも、最終的にはソビエト連邦という枠組みの中で各民族を統合することを目指していました。そのため、彼の民族政策は、ソビエト体制の維持・強化のために利用された側面があります。
* **民族浄化の正当化:** スターリンは、第二次世界大戦中に、特定の民族を「裏切り者」とみなし、強制移住させるなどの弾圧政策を行いました。彼の民族理論は、こうした民族浄化を正当化する根拠として利用されたという側面も否定できません。
結論
スターリンの「マルクス主義と民族問題」は、民族の定義、民族自決権の主張など、多民族国家建設において一定の理論的基盤を提供しました。しかし、その理論は曖昧さを抱えており、現実の政策においては、ソビエト体制の維持・強化のために利用された側面も否定できません。さらに、彼の民族理論は、民族浄化を正当化する根拠として悪用されたという側面も存在します。