スタンダールの赤と黒の原点
現実の事件に着想を得た作品
スタンダールの小説『赤と黒』は、1827年にフランスで実際に起きた殺人事件から着想を得た作品です。この事件は、アントワーヌ・ベルテという青年が、かつての恋人であり、自身を雇っていた裕福な未亡人 Madame Michoud を教会で銃殺したというセンセーショナルなものでした。
当時の社会状況を反映
スタンダールは、この事件を単なる犯罪として捉えるのではなく、当時のフランス社会の矛盾や歪みが生み出した悲劇として描こうとしました。
小説の舞台となる19世紀前半のフランスは、ナポレオン失脚後の王政復古期にあたり、貴族階級が再び力を持ち始めていました。一方で、フランス革命の影響で自由や平等を求める意識が高まった市民階級は、社会的地位や経済的な成功を求めていました。
主人公ジュリアン・ソレルは、貧しい家に生まれた聡明な青年ですが、当時の社会では身分が低いために正当な評価を得られず、野心と現実の狭間で苦悩します。