スタンダールの赤と黒とアートとの関係
絵画と彫刻
スタンダールの「赤と黒」では、絵画や彫刻は、登場人物の心情や社会的な地位を表す小道具として効果的に用いられています。
主人公ジュリアン・ソレルは、ナポレオンに憧れる野心的な青年であり、その内面世界は、彼の部屋に飾られたナポレオンの肖像画によって象徴的に表現されています。また、裕福なレナール夫人と駆け落ちを企てる場面では、ジュリアンは彼女に、愛の証として肖像画を描くことを提案します。この時、彼は自らを偉大な画家であるラファエロと重ね合わせています。
一方、貴族社会の象徴であるラ・モール侯爵家は、代々受け継がれてきた肖像画や彫刻で飾られた豪華な邸宅に住んでいます。こうした美術品は、彼らの社会的な地位や権威を視覚的に示すと同時に、古い価値観に縛られた彼らの保守的な側面を暗示しています。
このように、「赤と黒」における絵画や彫刻は、登場人物たちの内面世界や社会的な関係性を浮き彫りにする重要な役割を担っています。