## スタンダールの恋愛論の選択
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「想像力の働き」による恋愛の選択
スタンダールは著書『恋愛論』の中で、恋愛感情の発展段階を段階的に論じています。その中でも特に重要なのが「想像力の働き」がもたらす効果です。
スタンダールによれば、人は恋愛対象に対してある種の「結晶作用」を働かせます。これは、対象人物の些細な特徴や行動を自分の中で都合よく解釈し、理想化していくプロセスを指します。
例えば、気になる相手がふと見せた優しい笑顔や、自分だけに話しかけてくれた時の声のトーンといった些細な出来事を、想像力によって増幅し、相手への好意を確信へと変えていくのです。
この「結晶作用」は、恋愛の初期段階において特に重要な役割を果たします。なぜなら、相手のことをまだよく知らない段階では、限られた情報と自分の想像力によって恋愛感情を育んでいくしかないからです。
しかし、この「想像力の働き」は、時として自己欺瞞を生み出す危険性も孕んでいます。現実の相手ではなく、自分が作り上げた虚像に恋をしている状態に陥ってしまう可能性があるからです。