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スタンダールのパルムの僧院から学ぶ時代性

スタンダールのパルムの僧院から学ぶ時代性

近代と伝統の相克

スタンダールの『パルムの僧院』は、ナポレオン時代の終焉と復古王政期のイタリアを舞台に、主人公ファブリスの愛と冒険、そして挫折を描いた物語です。この作品は、単なる恋愛小説の枠を超え、当時の社会や人間の心の葛藤を鋭く描き出した傑作として知られています。

特に注目すべきは、作品全体を貫く「近代と伝統の相克」というテーマです。ファブリスは、ナポレオンに憧れ、自由と情熱を求めて戦場へと身を投じます。しかし、現実の戦争は彼の理想とはかけ離れたものでした。復古王政下のイタリアでは、旧体制の権力構造が復活し、自由や平等といった近代的な価値観は抑圧されていきます。

ファブリスの叔父であるエルネスト伯は、教会の権力者として、伝統的な価値観を守ろうとする保守的な人物として描かれています。彼は、ファブリスの自由奔放な生き方を危険視し、彼を教会の権力によって支配しようとします。

愛と欲望の葛藤

もう一つの重要なテーマは、「愛と欲望の葛藤」です。ファブリスは、様々な女性と恋に落ちますが、そのどれもが悲劇的な結末を迎えます。

彼は、高貴な女性クレリアと身分違いの恋に苦悩し、女優のマリネッタには情熱的な愛を捧げます。しかし、これらの愛は、社会的な束縛や自身の未熟さによって、最終的には叶わぬ夢となります。

ファブリスの愛は、常に自己中心的で、理想と現実のギャップに苦しむ姿が描かれています。これは、近代化によって生じた、個人主義と伝統的な道徳観との間の葛藤を象徴しているとも言えるでしょう。

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