スタインベックの真珠の原点
メキシコでの経験
1940年、スタインベックは海洋生物学者のエドワード・F・リケッツと共に、カリフォルニア湾への6週間の海洋生物採取旅行に出かけました。この旅は、後の作品「コルテスの海」の執筆へと繋がります。この旅行中、スタインベックは真珠採りの貧しい漁師たちの暮らしや、彼らが真珠に抱く夢と欲望を目の当たりにしました。特に、彼らが滞在したラパスという町で、先住民が素晴らしい真珠を発見し、そのために殺害されたという地元の伝説を聞かされました。
「真珠」の着想
スタインベックはこの旅で得た経験と、聞いた伝説から着想を得て、「真珠」の構想を練り始めました。彼は1944年に娘のキャサリンに宛てた手紙の中で、「真珠」の構想について触れており、その時点で既に物語の骨組みはほぼ完成していたと考えられています。
寓話としての「真珠」
「真珠」は、単なる真珠をめぐる物語ではなく、人間の欲望や社会の不条理を描いた寓話として解釈されています。スタインベックは、この作品を通して、富や幸運が必ずしも幸福をもたらすとは限らず、逆に不幸や悲劇を生み出す可能性もあることを示唆しています。
出版と影響
「真珠」は、1947年に雑誌「ウーマンズ・ホーム・コンパニオン」に掲載された後、同年中に単行本として出版されました。この作品は、出版後すぐにベストセラーとなり、映画化もされました。現在でも、スタインベックの代表作の一つとして、世界中で広く読まれています。