## スタインベックの怒りの葡萄の批評
### 社会主義的リアリズムとプロレタリア文学
「怒りの葡萄」は、1930年代の世界恐慌時代におけるアメリカの農民の窮状を描いた作品として、社会主義的リアリズムの代表作として位置付けられています。スタインベックは、資本主義の矛盾や社会の不条理を告発し、貧困と搾取に苦しむ労働者階級の現実を克明に描き出しています。
### ジョード一家: 象徴としての存在
物語の中心となるジョード一家は、オクラホマ州の農地を追われた貧しい白人一家です。彼らは、「約束の地」カリフォルニアを目指して過酷な旅を続けますが、そこで待ち受けていたのは、低賃金労働や差別、そして人間の尊厳を踏みにじる仕打ちでした。ジョード一家の苦難は、当時のアメリカ社会における労働者階級全体の苦難を象徴的に表しています。
### 自然主義的な描写と聖書的イメージ
スタインベックは、自然主義的な手法を用いて、登場人物たちの行動や心理を環境や遺伝によって規定されたものとして描いています。また、作品全体にわたって、旧約聖書からの引用や暗示がちりばめられており、ジョード一家の旅は、モーセに率いられたイスラエルの民の出エジプトになぞらえられています。このような聖書的イメージは、作品に壮大なスケールと普遍的なテーマを与えています。
### 批判と論争: 作品に対する評価
「怒りの葡萄」は出版当時から大きな反響を呼び、ピューリッツァー賞を受賞するなど高い評価を受けました。しかし、その一方で、共産主義的であるとして批判を浴び、一部の地域では発禁処分を受けるなど、論争の的となりました。作品に対する評価は、時代背景や読者のイデオロギーによって大きく左右されるものでした。