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スタインベックの怒りの葡萄から学ぶ時代性

## スタインベックの怒りの葡萄から学ぶ時代性

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大恐慌時代の現実と人間の尊厳

 1930年代アメリカを襲った大恐慌は、農村部にも深刻な打撃を与えました。スタインベックは「怒りの葡萄」において、オクラホマの農地を追われたジョード一家を主人公に、当時の農民たちの過酷な現実を生々しく描いています。

 干ばつによる Dust Bowl (ダストボウル)、機械化による失業、地主による土地の奪取など、農民たちは様々な苦難に直面します。家や土地を失い、カリフォルニアという「約束の地」を目指して移動する姿は、まさに時代の縮図と言えるでしょう。

 しかし、過酷な状況下でも、ジョード一家は希望を捨てず、助け合いながら生き抜こうとする姿が印象的です。特に、母親のジョーディは、家族の精神的な支柱として、どんな苦難にも立ち向かう強さを持ち合わせています。

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資本主義の矛盾と社会への告発

 「怒りの葡萄」は、厳しい現実を描写するだけでなく、当時の社会システムへの痛烈な批判も内包しています。

 銀行や大地主といった資本家たちは、利益を追求するために、農民たちを搾取し、苦境に追い込んでいきます。一方、職を求めてカリフォルニアに流れ着いた農民たちは、低賃金で過酷な労働を強いられます。

 スタインベックは、このような資本主義の矛盾が、人間性を歪め、社会全体を崩壊に導くと警告を発しています。弱い立場の人々が、更に苦境に追い込まれていく様子は、現代社会にも通じる問題と言えるでしょう。

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連帯と希望:人間の力強さへの信念

 過酷な現実と社会の矛盾を描写する一方で、「怒りの葡萄」は、人間の力強さへの信念も描き出しています。

 苦難の中でこそ、ジョード一家は他人への共感と連帯を育んでいきます。同じ境遇の労働者たちと助け合い、共に闘う姿は、人間の持つ可能性を示唆しているようにも思えます。

 特に、物語終盤で、洪水に見舞われた家族を助けるために、ローザ・シャロンが自らの母乳を与えるシーンは象徴的です。それは、苦難の中でこそ、人間は自己犠牲の精神や深い愛情を示すことができるという、スタインベックの強いメッセージが込められていると言えるでしょう。

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