スタインベックのエデンの東の周辺
作品概要
『エデンの東』は、アメリカの作家ジョン・スタインベックが1952年に発表した長編小説です。スタインベック自身も「最高傑作」と評したこの作品は、旧約聖書の創世記におけるカインとアベルの物語をモチーフに、カリフォルニア州サリナス渓谷を舞台に、2組の家族、ハミルトン家とトラスク家の二代にわたる愛憎劇が描かれます。
時代背景
物語の舞台は19世紀後半から20世紀初頭にかけてのアメリカ、特にカリフォルニア州サリナス渓谷です。この時期は、アメリカが westward expansion(西進運動) を経て、経済的に大きく発展を遂げようとしていた時代でした。同時に、伝統的な価値観と新しい価値観とがせめぎ合い、人々の心に大きな変化が生まれていた時代でもあります。
舞台設定
舞台となるサリナス渓谷は、スタインベック自身が生まれ育った地であり、彼の多くの作品に登場します。肥沃な土地が広がり、農業が盛んなこの土地は、スタインベックにとって、人間の根源的な営みと、自然の力強さを象徴する場所でした。作中では、サリナス渓谷の美しい自然描写と、そこで暮らす人々の生活が、対比的に描かれています。
登場人物
『エデンの東』には、個性豊かな登場人物が数多く登場します。主要な登場人物としては、以下の様な人物が挙げられます。
* **アダム・トラスク:** 東部出身の理想主義的な農夫。聖書のアダムを彷彿とさせる人物。
* **キャシー・エイムズ / ケイト:** アダムの妻となるも、冷酷な本性を隠し持つ謎多き女性。
* **チャールズ・トラスク:** アダムの兄で、現実主義的な性格。聖書のカインを彷彿とさせる。
* **サミュエル・ハミルトン:** アダムの友人である、賢明な老人。アイルランド系移民。
* **リー:** ハミルトン家に仕える中国人労働者。聡明で、物語の語り部的役割も担う。
テーマ
『エデンの東』は、善と悪、愛と憎しみ、自由と束縛といった、普遍的なテーマを描いた作品です。スタインベックは、聖書の物語を下敷きにしながらも、人間の本質を鋭く描き出し、読者に深い問いかけを投げかけています。