## スタインベックの「エデンの東」からの学び
カインとアベル – 普遍的な人間の闘争
スタインベックは、旧約聖書のカインとアベルの物語を、世代を超えて受け継がれる人間の闘争の原型として利用しています。カインとアベルは、単なる兄弟ではなく、人間の心に存在する二つの側面、善と悪、愛と憎しみ、自己犠牲と利己主義を表しています。作中では、アダム・Trask とチャールズ・Trask、キャシー・Ames とアブラ・Bacon、アロン・Trask とケイレブ・Trask などの対比を通じて、この二項対立が繰り返し描かれています。彼らは、善悪の単純な二元論ではなく、人間の複雑さを体現しており、その葛藤を通して、読者は人間の心の奥深くに迫ることになります。
自由意志と「timshel」の重要性
「エデンの東」の中心的なテーマの一つに、「timshel」という言葉が象徴する人間の自由意志があります。旧約聖書の創世記の一節「汝は蛇を砕くであろう」を、スタインベックは「汝は打ち勝つであろう」と解釈し、人間には運命に抗う力があることを示唆しています。作中の人物は、自身の選択によって、愛と憎しみ、善と悪の間で葛藤し、その結果、自身の運命を切り開いていきます。特に、キャシーの悪行とアロンの苦悩、ケイレブの苦悩と自己受容は、人間が自らの選択によって、善悪のどちらの道を歩むこともできることを如実に示しています。
自然と人間の複雑な関係性
スタインベックは、自然を単なる背景として描くのではなく、登場人物たちの感情や運命と密接に結びついた存在として描いています。サリナス渓谷の豊かな自然は、登場人物たちに安らぎと希望を与える一方で、自然災害や厳しい環境は、彼らの生活を脅かす存在でもあります。この自然との複雑な関係性は、人間の生と死、喜びと悲しみ、繁栄と衰退が織りなす、人生の複雑さを象徴しています。