## スウィフトのガリヴァー旅行記の分析
第一部：リリパット小人国旅行記
ガリバーが最初に漂着するリリパットは、あらゆるものがガリバーの体の12分の1しかない小人の国です。ガリバーはリリパット人と交流する中で、その文化、政治、戦争に巻き込まれていきます。
リリパット人は、一見滑稽なほど小さな存在ですが、その社会は当時のイギリスを風刺的に反映しています。例えば、高位の官職を得るための綱渡りの儀式は、能力よりも政治的な駆け引きが重視される宮廷社会を揶揄しています。
また、リリパットと隣国ブレスフク帝国との戦争は、イギリスとフランスの抗争を矮小化したものです。卵の割り方に関する争いが原因で戦争に発展するという設定は、国家間の争いがいかに些細なことから起こりうるのかを痛烈に批判しています。
第二部：ブロブディンナグ巨人国旅行記
巨人国ブロブディンナグでは、ガリバーは逆に周囲の人間よりもはるかに小さい存在となります。ここでは、巨人の視点から人間社会の醜悪さや愚かさが浮き彫りになります。
例えば、ガリバーがイギリスの歴史や社会制度を誇らしげに語っても、巨人の王様には理解できないどころか、滑稽で野蛮なものに映ります。これは、人間中心的な価値観を相対化し、自らの文明を客観的に見つめ直すよう促していると言えるでしょう。
また、ガリバーが巨大なハエやネズミに恐怖する様子は、人間がいかに弱く、無力な存在であるかを改めて認識させます。巨人国での経験を通して、ガリバーは人間の傲慢さや愚かさを痛感し、謙虚さを学ぶことになります。
第三部：ラピュタ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリブ、日本への旅行記
第三部では、ガリバーは様々な風変わりな国々を訪れます。
空飛ぶ島国ラピュタは、学問や芸術に没頭するあまり、現実世界との繋がりを失った知識人の愚さを象徴しています。
バルニバービでは、不死の人間たちが描かれていますが、彼らは老いによる衰えや死への恐怖から解放された代わりに、生きる喜びや希望を失っています。
日本への旅行は、当時のヨーロッパ人にとって未知の国であった日本に関する情報を提供すると同時に、ガリバーの西洋人としての視点から見た日本の文化や風習を風刺的に描いています。
第四部：フウイヌム国とヤフー国旅行記
最後の航海でガリバーは、知性を持つ馬フウイヌムが支配する国と、人間の醜い部分を形にしたような獣ヤフーが生息する国を訪れます。
理性的で高潔なフウイヌムと、欲望に忠実で醜悪なヤフーの対比は、人間の本質に対する根源的な問いを投げかけます。ガリバーは、理性的なフウイヌムに憧れを抱く一方で、ヤフーの姿に自分自身の醜い部分を見出し、苦悩します。
最終的にガリバーは人間社会への嫌悪を募らせ、人間と関わることを拒絶するようになります。この結末は、人間社会に対するスウィフトの深い絶望と、人間の理性に対する懐疑を反映していると言えるでしょう。