ジンメルの生の哲学の対極
「生の哲学」とその特徴
ゲオル・ジンメル(1858-1918)は、ドイツの哲学者、社会学者。「生の哲学」を代表する思想家の一人として知られています。彼は、生の流れ、経験の全体性、瞬間の強度といったものを重視し、近代社会における個人と社会、文化と個人の葛藤などをテーマに論じました。
ジンメルの哲学の特徴としては、以下のような点が挙げられます。
* **生の流れと断片性:** ジンメルは、生を静止したものではなく、絶えず変化し続ける流れとして捉えました。また、近代社会においては、生の様々な側面が分断され、断片化されていると指摘しました。
* **主観と客観の相互作用:** 彼は、主観と客観を二元論的に対立させるのではなく、相互に影響し合い、互いに構成し合う関係にあると考えました。
* **近代社会における個人の疎外:** ジンメルは、近代社会の進展とともに、個人が社会から疎外し、孤独感を深めていくと論じました。
* **文化の悲劇:** 彼は、文化の創造と発展が、皮肉にも個人の自由や創造性を阻害する側面を持つことを「文化の悲劇」として指摘しました。
対極に位置する思想 – 実証主義 –
ジンメルの「生の哲学」の対極に位置する思想の一つとして、19世紀後半から20世紀初頭にかけて大きな影響力を持った**実証主義**が挙げられます。実証主義は、経験的に検証可能なもののみを知識として認め、形而上学的な思弁や主観的な解釈を排斥する立場です。
実証主義の特徴
* **経験主義と帰納法:** 実証主義は、知識の源泉を感覚経験に求め、観察や実験によって得られたデータから帰納的に法則を導き出すことを重視します。
* **客観性と価値中立性:** 実証主義は、科学的知識は客観的で価値中立であるべきだと考えます。研究者の主観や価値観が研究結果に影響を与えることを避け、客観的な事実を明らかにすることを目指します。
* **法則定立と予測:** 実証主義の目標は、個々の現象を説明するだけでなく、普遍的な法則を発見し、未来の現象を予測することにあります。
* **社会科学への応用:** 実証主義は、自然科学的方法を社会科学にも適用しようとする立場です。社会現象も自然現象と同じように法則性に従っており、客観的な方法によって研究できると考えます。
実証主義の代表的人物
実証主義を代表する人物としては、以下のような人物が挙げられます。
* **オーギュスト・コント:** 「社会学」という学問用語を提唱し、社会現象を自然科学と同じ方法で研究すべきだと主張しました。
* **ジョン・スチュアート・ミル:** 経験主義に基づいた論理学や科学的方法論を展開し、社会科学にも応用しました。
* **エミール・デュルケーム:** 社会学を「社会的事実」を研究する学問として確立し、実証的な研究方法を重視しました。