## ジョイスの若い芸術家の肖像の世界
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登場人物
* **スティーブン・デダラス:** 本作の主人公。幼少期から青年期にかけての成長が描かれる。感受性が強く、知性にあふれ、芸術家としての自己を模索する。
* **サイモン・デダラス:** スティーブンの父。かつて裕福だったが、物語が進むにつれて没落していく。
* **メアリ・デダラス:** スティーブンの母。敬虔なカトリック教徒。
* **ダンテ・リヴィエール:** スティーブンの叔母。スティーブンとサイモンの関係の緩衝材となる。
* **エマ:** スティーブンが思慕を募らせる少女。
* **クランリー:** スティーブンの学友。皮肉屋で、スティーブンの芸術家としての野心を嘲笑する。
* **リンチ:** スティーブンの学友。スティーブンと哲学的な議論を交わす。
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舞台
* **ダブリンとその周辺:** 19世紀末から20世紀初頭のダブリンが主な舞台。当時のダブリンは、イギリスからの独立運動が激化し、民族主義が高まっていた。
* **クロンゴウズ・ウッド・カレッジ:** スティーブンが通う寄宿学校。厳格な規律で知られる。
* **ベルベディア・ハウス:** スティーブンが家族と暮らす家。かつては裕福な家の象徴だったが、物語が進むにつれて荒廃していく。
* **ダブリン大学:** スティーブンが進学する大学。ここで彼は、文学や哲学に没頭し、芸術家としての才能を開花させていく。
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テーマ
* **芸術家の成長:** 本作は、スティーブン・デダラスが幼少期から青年期を経て、芸術家としての自己を確立していく過程を描いている。
* **アイデンティティの模索:** スティーブンは、家族、宗教、国家といった様々な束縛から逃れ、自分自身のアイデンティティを確立しようと苦悩する。
* **宗教と信仰:** スティーブンは、敬虔なカトリック教徒の家庭で育つが、成長するにつれて教会の教えに疑問を抱くようになる。
* **アイルランド民族主義:** 当時のダブリンは、イギリスからの独立を求める機運が高まっており、スティーブンもまた、アイルランド人としてのアイデンティティについて葛藤する。
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文体
* **意識の流れ:** 本作は、スティーブンの内面世界を、彼の思考や感覚をそのまま描写する「意識の流れ」と呼ばれる手法を用いて描いている。
* **自由間接話法:** 作者の視点と登場人物の視点が混在する「自由間接話法」を用いることで、スティーブンの内面をより深く描き出している。
* **象徴主義:** 作品全体にわたり、スティーブンの内面世界を象徴的に表現するモチーフやイメージが散りばめられている。