ジョイスの若い芸術家の肖像に影響を与えた本
聖アウグスティヌスの告白
ジェームズ・ジョイスの『若き芸術家の肖像』は、芸術家としての自己発見の旅路におけるスティーブン・デダラスの知的および精神的な発展を、部分的には聖アウグスティヌスの『告白』の影響を通してたどっています。アウグスティヌスの回心物語としての影響は、デダラスの自身の宗教的および知的目覚めを形作っています。このエッセイでは、『告白』がジョイスの作品にどのような影響を与えているのかを、とりわけ主題の類似点、スティーブンの精神的発展、美学と官能性の対比に焦点を当てて探っていきます。
『告白』と『若き芸術家の肖像』はどちらも、罪、贖罪、真実の探求というテーマを探求しています。アウグスティヌスの回心譚とスティーブンの世俗的な道は、自身の肉体的および精神的な欲望との葛藤を反映した並行する軌跡として機能しています。アウグスティヌスの有名な言葉「あなたのために自分自身を創造されました。そして、私たちの心は、あなたの中で安らぎを見いだすまで落ち着きません」は、スティーブンの芸術を通して美と意味を見つけるための闘いと共鳴しています。どちらも、人生の大きな疑問に対する答えを見つけようとしています。アウグスティヌスは、神に慰めを求めていますが、スティーブンは、芸術的表現を通じて、それを発見しようとしています。この探求は、自己発見と真実の探求における人間の闘いの普遍性を強調しています。
さらに、『告白』におけるアウグスティヌスの精神的な旅は、『若き芸術家の肖像』におけるスティーブンの知的および精神的な発展を形作っています。スティーブンは、若い頃、厳格なカトリックの教育を受けて育ちますが、後に教会から離れ、自分の道を選ぶことを決意します。この反抗的な精神は、アウグスティヌスが、様々な哲学的および精神的な伝統を探求した後、キリスト教に転向した自身の旅路を反映しています。スティーブンの教会からの離反とその後の人間の経験の探求は、個人として独自の芸術性を発見するための、アウグスティヌスの信仰への独自の道の影響を浮き彫りにしています。
さらに、『告白』における美学と官能性の対比は、『若き芸術家の肖像』におけるスティーブンの葛藤にも反映されています。アウグスティヌスは、精神的な領域と物質的な領域との間の葛藤に取り組み、しばしば肉体的な誘惑を精神的な成長の障害と見なしています。スティーブンも同様に、芸術的感性を追求する中で、この二分法に苦悩し、肉体の欲望と精神的な願望とのバランスをとろうとしています。スティーブンのアイリーンとの出会い、そして彼のその後の罪悪感は、アウグスティヌスの肉欲との闘いを反映しており、美と官能性の魅力がスティーブンの発展途上の芸術的感性に影響を与えています。
結論として、聖アウグスティヌスの『告白』は、『若き芸術家の肖像』に大きな影響を与え、スティーブン・デダラスのキャラクターとテーマの旅を形作っています。罪と贖罪、真実の探求、精神的な成長、美学と官能性の対比を探求することで、ジョイスはアウグスティヌスの作品から引き出し、芸術と自己発見の複雑なタペストリーを作り出しています。スティーブンが自分自身の精神的および芸術的な道を切り開いていく中で、アウグスティヌスの影響は、信仰から離れながらも、人間の経験の永続的な疑問を探求するための枠組みを提供しています。