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ジョイスのユリシーズを読む前に

## ジョイスのユリシーズを読む前に

ユリシーズを読む前の心構え

ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』は、20世紀モダニズム文学の金字塔と称される一方で、その難解さゆえに、読破を断念するものが後を絶たないことでも知られています。 実際、『ユリシーズ』は、文学的素養、歴史や神話に関する知識、そして何よりも、忍耐強く読み解いていく強い意志と好奇心を求められる作品です。

予備知識はどのくらい必要?

『ユリシーズ』をより深く理解するために、事前にいくつかのポイントを押さえておきましょう。

* **ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』:** 『ユリシーズ』は、『オデュッセイア』の主人公オデュッセウス(英語名ユリシーズ)の帰郷譚をモチーフに、ダブリンを舞台に平凡な1日を過ごす主人公レオポルド・ブルームの一日を対比させています。 あらすじや登場人物、時代背景などを知っておくことで、『ユリシーズ』の多層的な構造とテーマをより深く理解することができます。
* **アイルランドの歴史と文化:** 舞台となる20世紀初頭のダブリンは、イギリスからの独立運動が激化するなど、政治的にも文化的にも激動の時代を迎えていました。当時のアイルランドの歴史や文化、そしてジョイス自身の生い立ちを知ることで、作品に込められたアイル랜드人としてのアイデンティティや祖国への愛憎といったテーマが見えてきます。
* **ジョイスの生涯と他の作品:** ジョイスは、『ユリシーズ』以前にも、『ダブリン市民』や『若き芸術家の肖像』といった作品を発表しています。これらの作品を読むことで、ジョイスの文体やテーマ、そして『ユリシーズ』へと至るまでの創作の軌跡を辿ることができます。

難解な文体への対処法

『ユリシーズ』の特徴の一つに、意識の流れと呼ばれる手法を用いた、難解で実験的な文体があります。 事前に心の準備をしておきましょう。

* **意識の流れ:** 登場人物の意識をそのまま文章化したかのような、断片的で論理性を欠いた表現が特徴です。最初は戸惑うかもしれませんが、頭の中で整理しようとせずに、言葉の響きやイメージをそのまま受け入れるように心がけてみましょう。
* **言葉遊びと多言語:** ジョイスは、英語だけでなく、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ラテン語など、様々な言語を駆使し、言葉遊びや駄洒落を多用しています。辞書や注釈を頼りに、一つ一つ意味を追っていくことも大切ですが、時には言葉の響きを楽しむことも重要です。
* **章ごとの文体変化:** 18のエピソードから構成される『ユリシーズ』は、章ごとに文体や視点が大きく変化します。事前に各章の概要や特徴を掴んでおくことで、変化に戸惑うことなく読み進めることができます。

読み進めるためのヒント

『ユリシーズ』は、決して簡単に読める作品ではありません。途中で挫折しそうになったら、以下のポイントを参考に、自分のペースで読み進めていきましょう。

* **完璧主義を捨てる:** 最初から全てを理解しようとせずに、わからない部分は読み飛ばしながら、まずは全体像を掴むことを意識しましょう。
* **地図や年表を活用:** ダブリンの地図や、作中の出来事を時系列にまとめた年表などを参照しながら読むと、登場人物の行動や時間の流れを把握しやすくなります。
* **他の読者と交流する:** 読書会に参加したり、オンラインコミュニティで意見交換したりすることで、新たな発見や解釈を得ることができ、モチベーションを維持することができます。
* **注釈書や解説書を活用する:** 注釈書や解説書は、難解な箇所や背景知識の理解を助けてくれます。最初から最後まで頼り切るのではなく、適宜参照しながら読み進めるようにしましょう。

『ユリシーズ』は、読者一人ひとりに異なる解釈と感動を与えてくれる作品です。 あまり肩肘を張らず、自分なりのペースで、ジョイスの作り出した広大な文学世界を探検してみてください。

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