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ジョイスのユリシーズの思索

ジョイスのユリシーズの思索

意識の流れ

「ユリシーズ」は、登場人物たちの意識の流れを克明に描写することで知られています。意識の流れとは、思考、感覚、感情が、論理的な順序や文法的な構造にとらわれず、奔流のように移り変わっていく様子を描写する文学的手法です。ジョイスは、この手法を用いることで、登場人物たちの内面世界を読者に直接体験させることを目指しました。

たとえば、主人公の一人であるレオポルド・ブルームの意識は、街を歩いている最中に見聞きする様々なもの、過去の記憶、妻との関係、将来への不安など、脈絡なく次々と浮かんできます。読者は、ブルームの思考の断片を、彼の視点から追体験することになります。

時間と空間

「ユリシーズ」は、1904年6月16日午前8時から翌17日午前2時45分までの、わずか1日の出来事を描いています。しかし、ジョイスは、この限られた時間とダブリンの街という限定された空間の中で、登場人物たちの意識を通して、人間の生の広がりと深淵を描き出しています。

また、ジョイスは、各章に異なる文学様式や神話、歴史、芸術などを対比させることで、時間と空間を多層的に表現しています。たとえば、「オデュッセイア」の各エピソードに対応する章は、ホメロスの叙事詩と現代ダブリンの日常生活を対比させることで、時間を超えた人間の普遍性を浮かび上がらせます。

言語

ジョイスは、「ユリシーズ」において、言語そのものを徹底的に実験的に扱っています。彼は、既存の語彙や文法にとらわれず、造語、多言語の混用、文語と口語の混在など、あらゆる言語表現を駆使することで、人間の思考や感情の複雑さを表現しようとしました。

また、ジョイスは、言語が持つ多義性や象徴性も積極的に利用しています。たとえば、ある単語が、文脈によって異なる意味を持つだけでなく、登場人物の心理状態や過去の出来事を暗示するなど、多層的な意味を持つことがあります。

「ユリシーズ」は、その難解さゆえに、多くの読者にとって容易に理解できる作品ではありません。しかし、ジョイスの革新的な文学技法と、人間の意識と存在に対する深遠な洞察は、20世紀文学に多大な影響を与え、現代においてもなお多くの読者を惹きつけています。

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