ジョイスのユリシーズの周辺
ユリシーズの出版
ユリシーズは、アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスによって書かれた長編小説です。1920年から1921年にかけて、フランスのパリで7年間の執筆期間を経て完成し、1922年2月2日にジョイスの40歳の誕生日に、シルヴィア・ビーチが経営するパリの書店「シェイクスピア・アンド・カンパニー」から出版されました。
モダニズム文学における位置付け
ユリシーズは、20世紀初頭のモダニズム文学を代表する作品の一つとされ、意識の流れ、内的独白、アリュージョン、パロディなどの技法を駆使し、人間の意識と経験を多層的に描き出しています。 また、ホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』との構造的な類似性も指摘されており、各章が『オデュッセイア』のエピソードに対応していると言われています。
わいせつ性と検閲
ユリシーズは、その性的に露骨な描写が原因で、出版当初からわいせつであるとして物議を醸し、アメリカとイギリスでは長年にわたり発禁処分を受けていました。 しかし、1930年代に入ると、文学者や批評家たちの間でユリシーズの文学的価値が広く認められるようになり、わいせつ性を理由とした発禁処分は撤廃されました。
難解さとその影響
ユリシーズは、その実験的な文体や難解な内容から、読解が非常に困難な作品としても知られています。 ジョイスは、神話、文学、歴史、哲学、心理学など、幅広い分野からの膨大な知識を作品に織り交ぜており、読者はそのすべてを理解することは難しいと言えます。 しかし、その難解さゆえに、ユリシーズは多くの読者を魅了し続け、文学研究の対象として、現在に至るまで様々な解釈や分析が試みられています。