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ジョイスのダブリン市民の構成

ジョイスのダブリン市民の構成

短編小説集としての構成

「ダブリン市民」は、それぞれ独立した短編小説15編から成る短編集です。各編はダブリンの異なる側面や社会階層を描写しており、全体としてダブリンという都市の包括的なポートレイトを提示しています。

三部構成

15の短編は、「幼年時代」「青春時代」「成熟時代」の三部構成に分けられています。

* **幼年時代**: 幼少期の無邪気さ、残酷さ、大人社会への戸惑いなどを描いています。
* 「姉妹たち」「出会い」「アラビー」「エヴリン」
* **青春時代**: 青年期の焦燥感、恋愛、自己模索などを描いています。
* 「レースの後で」「二人の女傑」「寄宿舎」
* **成熟時代**: 結婚、仕事、政治、宗教など、成人期の様々な問題を描いています。
* 「小さな雲」「対比」「粘土」「痛ましい事件」「慈悲の学園」「恩寵の光」「死者たち」

「死者たち」の位置

最終編の「死者たち」は、他の短編と比べて際立って長く、複雑な構造を持っています。この作品は、それまでの短編の集大成として機能し、ダブリン市民全体の精神的な麻痺状態を象徴的に描いています。

繋がり

各短編は独立していますが、登場人物や場所、モチーフが重複することで緩やかに繋がり、全体として一つの有機的な作品世界を構築しています。 例えば、「姉妹たち」に登場する神父フリンは、「エヴリン」にも名前のみ登場します。 また、「対比」の主人公ファリントンは、「慈悲の学園」にも登場します。

リアリズム

ジョイスは、ダブリン市民の日常生活、会話、心理を詳細かつ写実的に描写しています。登場人物たちは、社会階層、職業、性格も様々で、当時のダブリン社会の縮図を描き出しています。

象徴主義

リアリズム描写の中に、象徴的な意味を持つモチーフやイメージが散りばめられています。 これらの象徴は、登場人物の心理状態やダブリン社会全体の閉塞感を暗示しています。 例えば、「アラビー」の盲目の少年や、「死者たち」で降る雪は、死や精神的な麻痺を象徴しています。

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