## ジョイスのダブリン市民の案内
ダブリン市民の舞台：ダブリン
ジェイムズ・ジョイスの短編小説集『ダブリン市民』（1914年）は、20世紀初頭のダブリンを舞台に、そこに住む人々の生活を描いています。それぞれの物語は、異なる登場人物の視点から語られますが、いずれもダブリンの街並みや雰囲気、そこに暮らす人々の心情が鮮やかに描かれている点が共通しています。
ダブリン市民の構成
『ダブリン市民』は、全15編の短編小説からなり、大きく3つの部に分かれています。
* **幼年時代:** 「姉妹たち」「出会い」「アラビー」「エヴリン」「レースの後で」
* **青年時代:** 「二人の紳士」「寄宿舎」「土くれ」「惨めな事件」
* **成熟期:** 「恩寵の光線」「死者たち」「委員会に来た男」「母親」「グレイス」
これらの物語は時系列に沿って配置されているわけではありませんが、各部は人生の段階を表しており、ダブリン市民の生活を多角的に描き出しています。
ダブリン市民のテーマ
『ダブリン市民』には、麻痺、逃亡、故郷といった主要なテーマが共通して見られます。
* **麻痺:** ダブリン市民は、社会、政治、宗教など、様々なレベルで麻痺に陥っている様子が描かれています。彼らは現状に不満を抱きながらも、そこから抜け出すことができずにいます。
* **逃亡:** 多くの登場人物が、ダブリンからの逃亡を夢見ています。彼らは、より良い生活を求めて、あるいは自分自身のアイデンティティを探すために、故郷を離れることを望んでいます。
* **故郷:** ダブリンは、登場人物たちにとって、愛憎入り混じった複雑な感情を抱かせる存在として描かれています。彼らは故郷に縛られながらも、そこから逃れたいという相反する思いを抱えています。
ダブリン市民の文体
ジョイスは、『ダブリン市民』において、写実主義と象徴主義を融合させた独自の文体を駆使しています。彼は、登場人物の心理描写に重点を置き、彼らの内面世界を鮮やかに描き出すために、自由間接話法や意識の流れといった手法を用いています。また、ダブリンの街並みや風俗を詳細に描写することで、物語にリアリティを与えています。