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ジスモンディの政治経済学新原理の機能

ジスモンディの政治経済学新原理の機能

ジスモンディの批判の矛先

ジスモンディ(Sismondi, 1773-1842)は、18世紀末から19世紀前半にかけて活躍した、スイス出身の経済学者・歴史家です。彼の主著『政治経済学新原理』(Nouveaux Principes d’économie politique, 1819)は、当時隆盛を極めていた古典派経済学、特にその中心人物であるアダム・スミス(Adam Smith, 1723-90)やジャン=バティスト・セイ(Jean-Baptiste Say, 1767-1832)の理論に対する痛烈な批判として知られています。

富の増加と社会の幸福

ジスモンディは、スミスの提唱した「労働価値説」や「見えざる手」といった概念を部分的に認めつつも、古典派経済学が「富の増加」のみを重視し、「社会の幸福」を軽視している点を厳しく批判しました。彼は、自由競争や分業の進展が、富の増大ではなく、貧富の格差の拡大や労働者の悲惨な状況を生み出すと主張したのです。

生産過剰と経済危機

ジスモンディは、古典派経済学の中心的な命題である「セイの法則」(供給はそれ自身の需要を生み出す)を否定し、現実の資本主義経済では「生産過剰」とそれに伴う「経済危機」が不可避的に発生すると論じました。彼は、労働者が生産した財貨をすべて消費できるだけの購買力を持たないため、生産過剰と経済危機が周期的に繰り返されると考えたのです。

国家による介入の必要性

ジスモンディは、このような資本主義経済の矛盾を克服するために、国家による積極的な介入の必要性を訴えました。彼は、労働時間規制や最低賃金制度などを通じて労働者の生活水準を向上させ、社会保障制度によって失業者や貧困者を救済すべきだと主張しました。

後の経済思想への影響

ジスモンディの思想は、その後の社会主義思想や福祉国家論に大きな影響を与えました。彼の著作は、マルクス(Karl Marx, 1818-83)をはじめとする多くの社会主義者に読まれ、資本主義批判の重要な理論的支柱となりました。また、彼の社会政策に関する提言は、19世紀後半以降に各国で導入された社会保障制度の先駆的な役割を果たしました。

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