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ジスモンディの政治経済学新原理の構成

## ジスモンディの政治経済学新原理の構成

第1巻 政府の富は国民の富と同一ではないこと

ジスモンディは、従来の経済学が富の増大のみを追求し、その分配を軽視してきたことを批判します。そして真の富とは国民全体の幸福にあり、政府の役割は国民の幸福を最大化することにあると主張します。

第1巻ではまず、富の概念を定義することから始めます。従来の経済学では、富は国家が保有する貴金属の量で測られてきました。しかしジスモンディは、真の富とは国民が享受する幸福の総量であると定義します。そして、政府の役割は、国民の幸福を最大化するように経済を運営することであると主張します。

さらに、自由放任主義経済がもたらす弊害を批判します。自由競争は、生産の過剰と消費の不足をもたらし、結果として経済危機を引き起こすと指摘します。また、富の集中は、貧富の格差を拡大し、社会不安を増大させると警告します。

第2巻 土地からの収入

第2巻では、富の源泉である土地に着目し、農業の重要性を説きます。ジスモンディは、土地こそが唯一の真の富の源泉であると考えます。そして、製造業は土地からの収入に依存しており、農業こそが経済の基盤であると主張します。

また、大土地所有制を批判し、小規模農民による自立的な農業の重要性を訴えます。大土地所有制は、土地の集中と農民の没落をもたらし、農業生産を低下させると考えます。一方、小規模農民は、土地への愛着と勤勉さから、より効率的に農業生産を行うことができると主張します。

さらに、農村共同体の重要性を強調します。農村共同体は、相互扶助や伝統的な知識の継承を通じて、農民の生活を支え、安定した農業生産を可能にすると考えます。

第3巻 人間の労働による収入

第3巻では、労働の価値と分配について論じます。ジスモンディは、労働こそが価値の源泉であるという労働価値説を支持します。そして、労働者は自分が生産した価値の全額を受け取るべきであると主張します。

しかし、現実には、資本家が労働者から搾取を行っていると批判します。資本家は、労働者に支払う賃金を最低限に抑え、利潤を最大化しようとします。その結果、労働者は貧困に苦しみ、生産物は過剰に供給されることになります。

この問題を解決するために、ジスモンディは、労働時間の短縮と賃金の引上げを提案します。労働時間の短縮は、労働者の生活の質を向上させるとともに、雇用を創出する効果があると期待します。また、賃金の引上げは、労働者の購買力を高め、過剰生産を解消すると考えます。

第4巻 人口について

第4巻では、人口問題を取り上げ、人口増加が経済に与える影響について考察します。ジスモンディは、マルサスの「人口論」の影響を受け、人口増加が貧困や失業などの社会問題を引き起こすと考えます。

しかし、ジスモンディは、マルサスのように人口増加を抑制する政策には反対します。その代わりに、雇用を創出し、労働者の生活水準を向上させることで、人口増加を抑制できると考えます。

具体的には、公共事業の実施や海外市場の開拓などを提案します。公共事業は、失業者に雇用を提供し、社会資本の整備を通じて生産性を向上させる効果があると期待します。また、海外市場の開拓は、新たな需要を生み出し、生産と雇用を拡大すると考えます。

第5巻 公債と税

第5巻では、国家財政について論じ、政府の役割と限界について考察します。ジスモンディは、政府は経済活動に積極的に介入し、国民の福祉を向上させるべきであると考えます。

具体的には、教育や社会福祉などの公共サービスの充実、労働条件の改善、環境保護などを提案します. しかし、政府の介入は、国民の自由と財産権を侵害しない範囲で行われなければなりません。

また、ジスモンディは、公債発行には慎重な立場をとります。公債発行は、将来世代に負担を先送りするものであり、安易に頼るべきではないと考えます。

ジスモンディは、「新原理」の中で、従来の経済学を批判し、独自の経済理論を展開しました。彼の思想は、その後の社会主義思想や福祉国家論に大きな影響を与えました。

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