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ジスモンディの政治経済学新原理と人間

## ジスモンディの政治経済学新原理と人間

ジスモンディの生きた時代背景と問題意識

ジャン・シャルル・レオナール・シモンド・ド・シスモンディ(1773-1840)は、激動の時代を生きた経済学者です。フランス革命とナポレオン戦争、そして産業革命の開始という時代背景の中で、シスモンディは従来の経済学が抱える問題点に気づき始めます。特に、アダム・スミスの提唱した自由放任主義経済が、現実社会にもたらす負の側面に強い疑問を抱きました。

『政治経済学新原理』における批判

シスモンディは1819年に主著『政治経済学新原理, あるいは富はどのようにして諸国民の生活に役立つか』を出版し、その中で従来の経済学、特にスミス経済学を以下のように批判しました。

1. **富の増大と幸福の関係**: スミスは国民の富の増大が、人々の幸福に繋がると考えていました。しかし、シスモンディは富の増大が必ずしも人々の幸福に直結するわけではなく、むしろ貧富の格差拡大や労働者の窮状を生み出す可能性を指摘しました。

2. **市場メカニズムへの疑問**: スミスは「見えざる手」による市場メカニズムが、社会全体の利益に繋がるとしていましたが、シスモンディは市場メカニズムが放置された場合、生産過剰や恐慌を引き起こし、社会に混乱をもたらすと主張しました。

3. **国家の役割**: スミスは自由放任を重視し、国家の市場介入を最小限に抑えるべきだと考えました。しかしシスモンディは、国家が積極的な役割を果たし、経済活動における不平等や不均衡を是正する必要性を訴えました。

シスモンディの人間観

シスモンディの経済学は、人間に対する深い洞察に基づいています。彼は、人間は利己的な存在であると同時に、共感能力や道徳心を持ち合わせた存在だと考えていました。シスモンディは、人間の利己心は経済活動を活発化させる原動力となる一方で、行き過ぎた利己心は社会全体に不幸をもたらすと考えました。

シスモンディの主張

シスモンディは、経済活動の目的は単なる富の増大ではなく、人々の幸福の実現にあるべきだと主張しました。そのために、政府は社会福祉政策や労働時間規制などを通じて、市場の失敗を修正し、人々の生活水準の向上と社会の安定を図るべきだと考えました。

シスモンディの影響

シスモンディの思想は、後の社会主義思想や福祉国家の考え方に大きな影響を与えました。彼の著作は、資本主義の抱える問題点に対する鋭い批判として、現代社会においても重要な示唆を与え続けています。

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