## ジスモンディの政治経済学新原理が扱う社会問題
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産業革命が生み出した光と影
ジスモンディは、当時の経済学の主流であったアダム・スミスの自由放任主義経済学を批判的に継承し、産業革命がもたらす負の側面にいち早く注目した経済学者の一人でした。彼の主著である『政治経済学新原理』は、1819年の初版刊行当時、イギリスを中心に隆盛を極めていた産業資本主義が抱える様々な社会問題を鋭く指摘し、大きな反響を呼びました。
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機械化による失業と労働問題
ジスモンディは、『新原理』において、機械の導入による大量生産が労働者階級の窮乏化を招くと論じました。当時、蒸気機関の発明に端を発する技術革新は、生産力の飛躍的な向上と同時に、労働者の大量失業という深刻な社会問題を引き起こしていました。ジスモンディは、機械化によって労働者が仕事を奪われる状況を「機械による労働者の駆逐」と呼び、資本主義社会における労働問題の根源として批判しました。
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生産過剰と恐慌の発生
また、ジスモンディは、自由競争を原理とする市場経済においては、生産過剰とそれに伴う恐慌が周期的に発生すると考えました。彼は、労働者階級の貧困化によって消費需要が減退すること、そして、企業間の競争が過剰な生産を招くことを指摘し、資本主義経済には本質的な不安定要素が内在すると主張しました。
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貧富の格差拡大と社会不安
ジスモンディは、資本主義の進展が富の偏在と社会の不安定化を招くと警告しました。彼は、資本家階級が利潤を独占し、労働者階級が貧困に苦しむ状況を批判し、経済的不平等が社会全体の不安定化につながると考えました。そして、このような状況を放置すれば、社会主義革命のような激動を招きかねないと危惧しました。