ジェームズの多元的宇宙の哲学の対極
一元論の系譜: パルメニデスからスピノザへ
パルメニデスは、古代ギリシャのエレア派に属する哲学者であり、その思想は、変化や多様性を否定し、存在の根源を一なる「有」に求めるものでした。彼は、感覚的な世界は錯覚であり、真の実在は不変で分割不可能な「一者」であると主張しました。
このパルメニデスの思想は、後の西洋哲学に多大な影響を与え、プラトンやアリストテレスといった哲学者たちも、その思想を継承しつつ、独自の哲学体系を構築していきました。特に、プラトンのイデア論は、感覚的な世界を超越したイデアの世界を想定することで、パルメニデスの「一者」の概念をより洗練された形で展開したものと言えるでしょう。
中世に入ると、新プラトン主義の影響を受け、プロティノスは、世界の根源を一なる「一者」に求め、そこから段階的に世界が流出するという emanation の概念を提唱しました。このプロティノスの思想は、後のキリスト教神学にも大きな影響を与え、偽ディオニシウス・アレオパギタなどを通じて、中世キリスト教思想の根幹を形成していくことになります。
近代に入ると、17世紀の合理主義哲学者バールーフ・デ・スピノザが、パルメニデスの影響を受けつつ、独自の汎神論を展開しました。スピノザは、神と自然を同一視し、この世界に存在するすべてのものは、神の属性の様態であると主張しました。彼の体系では、神は無限の属性を持つ唯一の実体であり、心身二元論を否定し、精神と物質は神の属性の異なる表現であるとされました。
このように、パルメニデスに端を発する一元論の系譜は、西洋哲学史において、常に主要な潮流の一つとして存在し続け、多様性や変化を強調する多元論と対峙してきました。ジェームズの多元的宇宙の哲学は、この一元論の系譜とは全く異なる立場から、世界の多様性と変化を肯定する立場をとっています。