## ジェームズの多元的宇宙の哲学の周辺
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ジェームズの多元的宇宙論とは
ウィリアム・ジェームズは、具体的な経験に根ざした現実理解を重視するプラグマティズムの代表的な哲学者の一人として知られています。彼の多元的宇宙論は、単一で絶対的な現実や真理を否定し、多様で変化し続ける複数の現実の可能性を認める立場です。
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経験の重視とラディカルな経験主義
ジェームズは、抽象的な概念や形而上学的な体系よりも、具体的な人間の経験を重視しました。彼にとって、経験とは感覚的なものだけでなく、思考や感情、宗教体験なども含む幅広いものでした。この立場は「ラディカルな経験主義」と呼ばれ、現実を構成する要素として、経験を超えた実体や法則を認めない点が特徴です。
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多元的な現実と真理の相対性
ジェームズは、単一の絶対的な現実を否定し、個々の経験者がそれぞれ独自の現実を構築すると考えました。これは、現実が個々の経験者の認識や解釈に依存する相対的なものであることを意味します。
同様に、真理についても絶対的なものではなく、それぞれの現実において有効な信念や行動規範として捉えられます。真理は固定されたものではなく、経験を通して絶えず変化し、発展していく動的なものとみなされました。
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「純粋経験」と「多元的宇宙」
ジェームズは、経験の根源として、主観と客観の区別がつかない「純粋経験」という概念を提唱しました。この純粋経験は、まだ分節化されていない、混沌とした状態であり、そこから個々の経験者の認識活動を通して、秩序だった現実世界が構築されると考えました。
そして、この純粋経験から生み出される現実世界のバリエーションは無限に存在し得るとし、それを「多元的宇宙」と呼びました。
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プラグマティズムと多元的宇宙の関係
ジェームズの多元的宇宙論は、彼のプラグマティズムの思想と密接に関係しています。 プラグマティズムは、概念や理論の価値をその実践的な効果によって判断する立場です。
ジェームズは、多元的な現実において、絶対的な真理は存在せず、それぞれの現実において有効な信念や行動規範が「真理」となる、と考えました。