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ジェイムズの心理学原理の構成

## ジェイムズの心理学原理の構成

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心理学の範囲と方法

ジェイムズの『心理学原理』は、まず心理学という学問分野の定義と範囲、そしてその研究方法について論じることから始まります。

第一部「心理学の範囲と方法」は、全三章から構成されます。

* 第一章「心理学の対象」では、心理学を「精神生活の事実、その現象とそれらの条件について記述し説明する学問」と定義し、意識、思考、感情、意志といった心的現象を研究対象とすることを明確化します。
* 第二章「心理学における内観の方法」では、心理学の主要な研究方法として内観を導入し、その限界と可能性について詳細に論じます。 また、内観に加えて、実験や比較的方法といった、当時としては新しい研究方法の有効性についても言及しています。
* 第三章「心理学における実験的方法」では、生理学や神経学の知見を心理学に導入することの重要性を強調し、実験を通して心的現象をより客観的に研究する方法論を探求します。

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意識の機能

続く第二部「意識の機能」では、五感を通じて得られる感覚経験から、意識の働きを詳細に分析していきます。

* 第四章「意識の構造」では、意識の捉え方として、従来の要素主義的な見方を批判し、意識は絶えず変化する流れであり、分割できない全体であるという「意識の流れ」の概念を提唱します。
* 第五章「時間における意識」では、意識は常に変化し続けるものであり、過去から未来へと流れる時間の中で捉えられるべきものであることを論じます。
* 第六章「識別と比較の機能としての意識」では、意識は単に感覚情報を passively に受け取るだけでなく、能動的に情報を識別し、比較するという機能を持つことを解説します。
* 第七章「感覚の内容」では、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった五感を例に挙げ、それぞれの感覚がどのように意識に表象されるのかを詳しく説明します。

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知覚

第三部「知覚」では、意識がどのようにして外界の情報を解釈し、意味づけを行うのかという、知覚の過程に焦点を当てています。

* 第八章「知覚」では、感覚器官から得られた情報が、過去の経験や知識に基づいて解釈され、意味づけられることで知覚が成立することを解説します。
* 第九章「知覚における注意」では、膨大な量の感覚情報の中から、特定の情報に選択的に意識を向ける「注意」の働きが、知覚において重要な役割を果たすことを説明します。
* 第十章「知覚における概念」では、個々の具体的な知覚経験が、抽象的な概念へと一般化される過程を論じます。
* 第十一章「知覚における連合」では、異なる感覚情報や過去の経験が互いに結びつくことで、より複雑な知覚が成立することを説明します。

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習慣と本能

第四部「習慣と本能」では、人間の行動の基盤となる、習慣と本能について考察します。

* 第十二章「習慣」では、行動の繰り返しによって神経系に変化が生じ、特定の行動パターンが形成される過程を「習慣」と定義し、その神経生理学的基盤について考察します。
* 第十三章「本能」では、人間を含む動物に生来備わっている、特定の刺激に対して決まった行動パターンを示す性質を「本能」と定義し、その種類や特徴、そして習慣との関係性について論じます。

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感情

第五部「感情」では、喜びや悲しみ、怒りといった感情の発生メカニズムと、感情が行動に与える影響について考察します。

* 第十四章「感情の生理学的基盤」では、感情は単なる精神的な現象ではなく、身体的な変化と密接に関連していることを強調し、感情に伴う生理的な変化について詳しく解説します。
* 第十五章「感情の理論」では、ジェームズ・ランゲ説と呼ばれる独自の感情理論を展開し、感情は身体的な変化に対する意識的解釈であると主張します。

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意志

第六部「意志」では、人間の意識的な行動の源泉となる「意志」について、その働きとメカニズムを深く掘り下げていきます。

* 第十六章「注意」では、意志の働きを理解する上で重要な概念である「注意」について、そのメカニズムや種類、そして注意が行動に与える影響について詳しく解説します。
* 第十七章「概念」では、思考の素材となる「概念」が、どのようにして形成され、組織化されるのかを解説し、概念の役割について論じます。
* 第十八章「推論」では、概念を用いて新しい知識を導き出す「推論」のプロセスを分析し、演繹法や帰納法といった推論の種類や特徴について説明します。
* 第十九章「意志の機能としての努力」では、困難な状況においても目標に向かって努力し続ける意志の力を「努力」と定義し、その心理学的メカニズムについて考察します。
* 第二十章「意志の範囲と訓練」では、意志の力は生まれつきの素質ではなく、訓練によって強化することができることを強調し、意志を鍛えるための具体的な方法について論じます。

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自我と自己意識

第七部「自我と自己意識」では、人間の意識体験の中心となる「自我」について、その構造と機能を多角的に分析します。

* 第二十一章「自己意識」では、「自己」を「肉体的自我」「社会的自我」「精神的自我」の三つに分類し、それぞれの自我が意識体験において果たす役割を解説します。
* 第二十二章「自己感情」では、自己に対する評価や価値判断といった「自己感情」が、行動や対人関係に与える影響について考察します。
* 第二十三章「自己主張」では、自己の欲求や価値観を実現しようとする「自己主張」の心理的メカニズムを解説し、自己主張と社会との関係性について論じます。

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催眠状態と異常心理

第八部「催眠状態と異常心理」では、通常の意識状態とは異なる「催眠状態」と、精神疾患を含む「異常心理」について考察します。

* 第二十四章「催眠状態」では、催眠状態の特徴や誘導方法、そして催眠状態における意識の変化について解説します。
* 第二十五章「異常心理」では、当時知られていた様々な精神疾患の症状や原因について、当時の知見に基づいて説明します。
* 第二十六章「多重人格」では、一つの身体に複数の自我が存在するとされる「多重人格」について、その事例や原因、治療法について考察します。

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心理学の哲学的含み

第九部「心理学の哲学的含み」では、心理学と哲学の関係性について考察し、意識の bản chất や自由意志の問題といった哲学的なテーマについて、心理学的な観点から論じます。

* 第二十七章「心理学と哲学の関係」では、心理学は哲学の一分野から独立した学問分野として発展してきた歴史を振り返りながら、両者の関係性について考察します。
* 第二十八章「意識の bản chất 」では、意識とは何かという根源的な問いに対して、唯物論や観念論といった様々な哲学的立場を紹介しながら、ジェームズ自身の見解を展開します。
* 第二十九章「自由意志の問題」では、人間の行動は決定論的に決まっているのか、それとも自由意志に基づいているのかという問題について、心理学的な観点から考察します。

ジェームズの『心理学原理』は、当時の心理学の主要なテーマを網羅した、非常に包括的な内容となっています。

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