## ジェイムズの心理学原理の感性
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感覚経験の重視
ウィリアム・ジェームズは、自身の著作『心理学原理』(1890年) において、人間の精神生活を包括的に分析しました。ジェームズは、特に意識の役割と機能に焦点を当て、従来の内観中心の心理学から脱却し、より実証的なアプローチを模索しました。
ジェームズにとって、感性は意識の基盤となるものでした。彼は、外界からの刺激が感覚器官を通じて神経系に伝達され、それが脳内で意識的な経験に変換されると考えました。この感覚経験こそが、ジェームズ心理学における出発点であり、彼はこれを「意識の素材」と呼びました。
ジェームズは、感覚経験の多様性と豊かさを強調しました。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といった五感をはじめ、身体内部の感覚や運動感覚、感情など、意識体験は実に多岐にわたります。彼は、これらの感覚経験を単なる受動的なものではなく、能動的な選択と解釈のプロセスと捉えました。
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感情のジェームズ=ランゲ説
ジェームズは、感情についても独自の理論を展開しました。一般的には、私たちは何かを認識し、その認識に基づいて感情が生じると考えられています。しかし、ジェームズはこれを逆転させ、身体的な変化が先に起こり、その変化を意識することが感情体験であると主張しました。
例えば、私たちは熊を見て恐怖を感じますが、ジェームズによれば、実際には熊を見て心臓がドキドキしたり、足が震えたりといった身体的な変化が先に起こり、その変化を意識することで「恐怖」という感情が生じるとされます。
この理論は、デンマークの生理学者カール・ランゲもほぼ同時期に提唱したことから、「ジェームズ=ランゲ説」として知られています。ジェームズ=ランゲ説は、感情が単なる精神的なものではなく、身体と密接に結びついたものであることを示唆しており、その後の感情研究に大きな影響を与えました。