シンガーの動物の開放の関連著作
ジェレミー・ベンサム『道徳および立法の原理序説』(1789年)
動物の道徳的地位に関する考察において、ジェレミー・ベンサムの『道徳および立法の原理序説』(1789年)は外すことのできない重要な著作です。ベンサムは功利主義の父として知られていますが、彼の倫理思想は動物の扱いにも大きな影響を与えました。
ベンサムは、道徳の原則は苦痛と快楽に基づくと主張しました。彼は、「最大の幸福原理」を提唱し、可能な限り多くの存在に、可能な限り最大の幸福をもたらす行為を道徳的に正しいとしました。重要なのは、ベンサムはこの「存在」に人間だけでなく、苦痛を感じることができるすべての動物を含めたことです。
『道徳および立法の原理序説』の中で、ベンサムは動物の苦しみに対する配慮の必要性を明確に述べています。彼は、動物が苦痛を感じることができるという事実こそが、彼らを道徳的に考慮すべき根拠となると主張しました。
>「問題は、彼らが考えることができるかどうかでも、話すことができるかどうかでもない。問題は、彼らが苦しむことができるかどうかだ。」
この一文は、動物解放論の歴史において非常に重要な意味を持つものとなりました。ピーター・シンガーもまた、彼の著書『動物の解放』の中でこのベンサムの言葉を引用し、動物の道徳的地位を論じています。
ベンサム自身は菜食主義者ではありませんでしたが、彼の動物の苦痛に対する共感と、功利主義に基づいた倫理思想は、後の動物の権利運動、そしてシンガーの動物解放論に大きな影響を与えることになりました。