シラーの群盗の関連著作
ジャン=ジャック・ルソー『人間不平等起源論』
シラーの『群盗』と深い関わりを持つ歴史的名著の一つに、ジャン=ジャック・ルソーの『人間不平等起源論』(1755年)が挙げられます。『群盗』の主人公カール・モーアは、社会の不正義と腐敗に憤慨し、森に逃れて盗賊団を率いる道を選びます。このカールの反逆心は、ルソーが『人間不平等起源論』で展開した社会契約論と自然状態における人間の自由という概念と共鳴します。
ルソーは、人間は本来自由で平等な自然状態に生きていたが、私有財産の出現と社会契約によって不平等や抑圧が生まれたと論じました。文明社会は、一部の人間が他の人間の労働を搾取する構造を作り出したとルソーは批判します。
『群盗』のカールもまた、貴族社会の腐敗と不平等を目の当たりにし、ルソー的な自然状態への回帰を志向します。彼は、森の中で盗賊団を結成し、富裕層から財産を奪って貧しい人々に分け与えることで、社会の不条理を是正しようと試みます。カールの行動は、ルソーの思想の影響を色濃く反映していると言えるでしょう。