シラーの群盗の原点
シラーの青年時代と当時の社会状況
フリードリヒ・シラーは1759年、ドイツのヴュルテンベルク公国の小さな町に生まれました。厳格な規律で知られるカール学院で教育を受けますが、抑圧的な環境や当時の社会の不自由さに反発を強めていきます。
シュトゥルム・ウント・ドラング運動の影響
18世紀後半のドイツ文学界では、理性や規則を重視した啓蒙主義に対抗するシュトゥルム・ウント・ドラング運動（疾風怒濤運動）が興りました。シラーもこの運動に共鳴し、感情や自由、人間の根源的な力強さをテーマにした作品を執筆するようになります。
先行作品との関連
「群盗」の着想には、いくつかの先行作品の影響が指摘されています。その一つが、1741年に出版されたイギリスのエドワード・ムーアの戯曲「The Foundling（捨て子）」です。この作品には、父親から財産を奪われ追放された主人公が、復讐のために盗賊団を率いるという筋書きが登場します。
実際の事件との関連
「群盗」の執筆には、当時のドイツで実際に起こった盗賊団の事件も影響を与えた可能性があります。特に有名なのが、1780年に処刑された「ボヘミアの森の羊飼いのニクラス」と呼ばれる盗賊の物語です。彼は貧困層から英雄視され、民衆の間で歌謡や伝説として語り継がれていました。
「群盗」の執筆と初演
シラーは1781年、22歳のときに「群盗」を書き上げました。初演は翌1782年、マンハイム国立劇場で行われ、若者を中心に熱狂的な支持を得ます。自由と正義を訴える主人公カール・モーアの言葉は、当時の観客の心を強く捉え、大きな反響を呼びました。