ショーペンハウアーの女について／倫理についてに匹敵する本
ショーペンハウアーの思想と影響
アルトゥル・ショーペンハウアーは、19世紀ドイツの哲学者で、その厭世観、禁欲主義、そして仏教の影響を受けた思想で知られています。「女について／倫理について」は、彼の主著『意志と表象としての世界』のエッセンスを抽出したもので、現代社会においても物議を醸す彼の女性観や倫理観が端的に示されています。
匹敵する名著：『第二の性』シモーヌ・ド・ボーヴォワール
ショーペンハウアーの「女について」と同様に、女性の立場や社会における役割について鋭く考察した書として、シモーヌ・ド・ボーヴォワールの『第二の性』（1949年）が挙げられます。実存主義哲学者であるボーヴォワールは、本書において「女は生まれつき女として存在するのではなく、女になるのだ」という有名なテーゼを掲げ、女性が歴史的に男性中心社会によって「他者」として位置づけられてきた過程を分析しました。
『第二の性』の内容と影響
『第二の性』は、女性の身体、セクシュアリティ、母性、結婚、老いなど、女性の人生における様々な側面を、生物学、心理学、歴史、文学など多岐にわたる分野の知見を交えながら考察しています。ボーヴォワールは、女性が社会的に構築された「女性らしさ」の枠組みに囚われずに、主体的な存在として自由に生きることを訴えました。
二つの書の共通点と相違点
ショーペンハウアーとボーヴォワールの両者は、女性の地位向上を願っていたわけではありません。ショーペンハウアーは女性を男性よりも劣った存在とみなし、ボーヴォワールは女性が男性社会の「他者」として位置づけられていることを批判しました。しかし、両者の著作は共に、性差や男女の関係について鋭い問題提起を行い、後の時代のフェミニズム運動にも大きな影響を与えたという点で共通しています。