ショーペンハウアーの女について／倫理についての評価

ショーペンハウアーの女性に関する記述は、現代の視点から見ると非常に問題含みであり、ミソジニー（女性嫌悪）だとする批判は多くの論者からなされています。

彼は著書『恋愛と結婚について』などで、女性を「客観的でなく、狭い視野しか持たず、不正直で、子供っぽい存在」などと断定的に記述しており、その論拠として生物学的・生理学的な根拠を挙げている点も特徴です。

しかし、ショーペンハウアーの女性観は、当時の西洋社会に根付いていた女性に対する偏見や差別を単に反映したものとする解釈も可能です。

当時のヨーロッパでは、女性の社会進出は限定的であり、教育や経済活動の機会も男性に比べて著しく制限されていました。

ショーペンハウアーの女性観は、このような社会状況や当時の一般的な価値観の影響を受けて形成された側面は否定できません。

ショーペンハウアーの倫理観は、彼の根底にある厭世観と深い関わりがあります。彼は、世界の本質を「盲目的意志」と捉え、人間は常にこの意志に突き動かされる苦悩に満ちた存在だと考えました。

彼の倫理の中心には「同情」という概念があり、他者の苦しみへの共感が道徳的行動の根源だと主張しました。

これは、当時の主流であったカント倫理のような理性に基づく義務論とは一線を画すものであり、ショーペンハウアーの倫理観の特徴と言えるでしょう。

しかし、彼の倫理観は、苦しみからの解放を目指すあまり、消極的で禁欲主義に陥っているという批判もあります。

例えば、彼は芸術や禁欲を通して一時的にでも意志から解放されることを理想としましたが、現実の社会における具体的な倫理的実践や政治的行動には消極的な姿勢を示しました。