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ショーペンハウアーの女について/倫理についてに影響を与えた本

ショーペンハウアーの女について/倫理についてに影響を与えた本

ショーペンハウアーの思想に影響を与えた仏教経典 – 無常と苦しみを説く『ダンマパダ』

アルトゥル・ショーペンハウアーは、19世紀ドイツの哲学者であり、その厭世的な哲学で知られています。彼の主著『意志と表象としての世界』は、世界は盲目で非理性的で、飽くなき欲望「意志」に突き動かされていると主張し、人間の苦しみはそこから生じると説いています。ショーペンハウアーは西洋哲学の伝統に深く根ざしながらも、仏教やウパニシャッド哲学など、東洋思想にも強い関心を抱いていたことはよく知られています。

特に、仏教経典の一つである『ダンマパダ』(真理のことば)は、ショーペンハウアーの思想形成に大きな影響を与えたと考えられます。『ダンマパダ』は、ブッダの教えを簡潔な詩句でまとめたもので、苦しみからの解放、すなわち悟りへの道を示しています。この経典は、ショーペンハウアーの厭世観、禁欲主義、そして慈悲の概念に深く関わっています。

まず、『ダンマパダ』の中心テーマである「無常」と「苦」の概念は、ショーペンハウアーの厭世的な世界観と共鳴します。ショーペンハウアーは、世界は絶え間ない変化と苦しみに満ちていると見なし、人間の存在を「意志」の苦悩に満ちたサイクルとして捉えました。『ダンマパダ』も同様に、すべてのものは移ろいやすく、執着は苦しみを生み出すと説いています。ショーペンハウアーはこの考え方に共感し、彼の哲学体系に取り入れていきました。

次に、『ダンマパダ』で説かれる欲望の放棄と禁欲生活は、ショーペンハウアーの倫理観、特に禁欲主義に影響を与えたと考えられています。『ダンマパダ』は、欲望を苦しみの根源とみなし、それを克服するために感覚的な快楽を追求するのではなく、精神的な修行に励むことを推奨しています。ショーペンハウアーもまた、個人の意志の否定と禁欲的な生活を通じてのみ、苦しみから解放されると考え、芸術や哲学への没頭を推奨しました。

さらに、慈悲の概念は、『ダンマパダ』とショーペンハウアーの倫理思想の接点となる興味深いテーマです。苦しみを認識し、自己の欲望を抑制するという点で、両者の思想には共通点が見られます。ショーペンハウアーは、苦しみへの共感から生まれる「憐憫」を倫理的な行動の根拠として重視しましたが、これは『ダンマパダ』で説かれる慈悲の概念と重なる部分があります。

このように、『ダンマパダ』は、無常と苦しみ、欲望の放棄と禁欲、そして慈悲の概念を通じて、ショーペンハウアーの厭世的な世界観、禁欲主義、そして倫理思想に多大な影響を与えたと考えられます。ショーペンハウアー自身、『ダンマパダ』を高く評価し、自身の哲学と共通点が多いことを認めています。彼は、東洋思想と西洋哲学の橋渡しをしようと試みた最初の哲学者の一人であり、その思想は現代においてもなお、多くの人々に影響を与え続けています。

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