シュムペンターの経済発展の理論の構成
1. 序論
シュンペンターは、1911年に出版された著書『経済発展の理論』の中で、資本主義経済がどのように発展していくのかを、イノベーションという概念を中心に説明しました。彼は、経済成長は、資本や労働などの生産要素の量的増加によって起こるのではなく、イノベーションによって既存の生産構造が質的に変化することによって起こると主張しました。
2. 静態経済の循環
シュンペンターは、イノベーションがもたらす経済発展を説明するために、まず、イノベーションが起こらない状態である「静態経済の循環」を仮定しました。この状態では、経済は一定の均衡状態を維持し、生産や消費などの経済活動は、過去の習慣や技術に従って繰り返されます。この循環は、以下の五つの前提に基づいています。
* **完全競争**: すべての市場は完全競争状態にあり、価格や生産量は市場メカニズムによって決定されます。
* **生産要素の定量性**: 資本や労働などの生産要素の量は一定であり、増加しません。
* **技術の固定性**: 生産技術は固定されており、進歩しません。
* **消費者の需要の不変性**: 消費者の嗜好や需要は一定であり、変化しません。
* **企業家精神の不在**: 企業家は存在せず、既存の経済活動が単に繰り返されます。
この状態では、利潤は発生せず、経済は停滞した状態にあります。
3. イノベーションと企業家
シュンペンターは、静態経済の循環を打破し、経済発展をもたらす原動力は「イノベーション」であると主張しました。イノベーションとは、新しい製品の開発、新しい生産方法の導入、新しい市場の開拓、新しい原料供給源の獲得、新しい組織形態の実現など、経済活動に新たな組み合わせをもたらすことを指します。
そして、このイノベーションを実行するのが「企業家」です。企業家は、リスクと不確実性に立ち向かい、新たな組み合わせを実現することで、一時的な独占的利益(シュンペータリアン利潤)を獲得します。
4. イノベーションの伝播と経済発展
企業家がもたらしたイノベーションは、模倣者によって徐々に他の企業や産業に広がっていきます。この過程で、当初のイノベーションによる独占的利益は消滅していきますが、経済全体では生産性 향상 や新しい需要の創出などが起こり、経済発展が実現します。
5. 経済発展の波動
シュンペンターは、イノベーションは連続的に起こるのではなく、断続的に発生すると考えました。新しいイノベーションがもたらされると、それに続く模倣の波が起こり、経済は一時的なブームを経験します。しかし、模倣が進み、イノベーションの効果が薄れていくと、経済は再び停滞期に入ります。このように、シュンペンターは、経済発展は波動的な動きを繰り返すと考えました。
6. 資本主義の衰退
シュンペンターは、資本主義は、イノベーションによって発展していく一方で、その成功が自らを生み出したイノベーションを阻害する要因を生み出すと考え、「資本主義は自ら作り出した成功によって衰退する」と主張しました。
彼は、大企業の官僚化、企業家精神の衰退、資本主義に対する批判の増大などをその要因として挙げました。