シュミットの政治的なものの概念の思想的背景
友敵論
シュミットは、政治を他の社会現象から区別する基準として「友敵」の区別を挙げます。これは、政治においては究極的には「味方か敵か」という生存に関わる判断が求められるという考えに基づいています。この友敵論は、当時のワイマール共和国における政党政治の混乱や、ナチスなどの全体主義運動の台頭を背景に、政治の現実を鋭く捉えたものとして注目されました。
国家主権論
シュミットは、政治的なものの主体として国家を重視し、その主権を擁護しました。これは、当時の国際連盟による国際協調主義の高まりに対する反発として理解することができます。シュミットは、国際法や国際機関は、国家間の利害対立を根本的に解消するものではなく、真の政治的な決断はあくまで主権国家によって行われるべきだと主張しました。
例外状態論
シュミットは、政治における主権者の役割を、例外状態を決定し、それに対応することだと定義しました。例外状態とは、通常の法秩序が通用せず、政治的な決断が直接的に国家の存続に関わるような非常事態を指します。シュミットは、このような例外状態においては、主権者は既存の法秩序を超越した決断を下すことが許されると主張し、それが主権の本質であるとしました。
政治的神学論
シュミットは、近代政治思想における主権概念が、神学的概念の影響を受けていることを指摘しました。彼は、近代的主権者が持つ絶対的な権力は、中世の神の全能性に由来するものであり、近代政治思想は、神学的概念を世俗化したものであると主張しました。