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シュミットの政治的なものの概念の対極

## シュミットの政治的なものの概念の対極

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ハンナ・アーレント著『人間の条件』

ハンナ・アーレントの主著『人間の条件』は、1958年に出版され、全体主義の台頭を考察する中で、人間の活動における政治の役割についての重要な洞察を提供しています。 アーレントは、カール・シュミットを含む20世紀初頭の政治思想家が、政治を本質的に敵対と権力闘争の領域として捉えていることを批判しました。

アーレントは、シュミットが提唱する「友-敵」の区別による政治の定義を、人間の多元性を否定する危険な単純化だと考えました。彼女は、政治を公共の領域における自由で平等な市民の協働による、共通世界の創造活動として捉え直そうと試みたのです。

『人間の条件』では、人間の活動は労働、仕事、活動の三つに区別されます。労働は生物としての生存を維持するための活動、仕事は人工物を創造し世界を構築する活動であり、活動は言葉と行為を通じて他者と関係を結ぶ、政治的な領域に属する活動です。アーレントは、活動こそが人間らしさを特徴づけるものであり、全体主義のように、公共空間における自由な活動を奪い、人間を労働と仕事のみに還元してしまうような政治体制は、人間の尊厳を脅かすものだと主張しました。

アーレントは、古代ギリシャのポリスにおける直接民主制を範例と、活動を通じた自由と多元性の価値を強調しました。彼女は、公共空間における対話と討議こそが、権力の濫用を防ぎ、共通善を実現するための基盤となると考えました。

『人間の条件』は、シュミットの政治観とは対照的に、政治を単なる権力闘争ではなく、自由で平等な市民が協働して共通世界を創造していく活動として捉え直すことで、現代社会における政治の役割について重要な示唆を与えています。

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