シュティルナーの唯一者とその所有と時間
シュティルナーにおける「唯一者」と「所有」
マックス・シュティルナーは、1844年に出版された著書『唯一者とその所有』で、個人主義的アナーキズムの立場から、国家、社会、道徳、宗教といったあらゆる権威やイデオロギーを否定し、「唯一者」としての個人とその「所有」の関係を論じました。
シュティルナーにとって、「唯一者」とは、理性や道徳、社会規範といった外部からの影響を一切受けずに、自己のみを唯一絶対の価値基準として生きる存在です。この「唯一者」は、既存のあらゆる価値観から自由であり、自己の意志と欲求のみによって行動します。
「所有」は、シュティルナーの思想において重要な概念です。彼は、従来の所有の概念を批判し、真の所有とは、単に物質的なものではなく、自己の力によって自由に使えるものすべてを指すとしました。つまり、思想、感情、能力、人間関係など、自己の意志によってコントロールできるものすべてが「所有」の対象となります。
時間と唯一者
シュティルナーは、時間を超越した永遠の自我や理念を否定し、唯一者は常に変化し続ける存在であると主張しました。唯一者は、過去の経験や未来への期待に縛られることなく、現在の瞬間にのみ存在します。
彼の思想において、過去は既に過ぎ去ったものであり、未来はまだ到来しない不確かなものです。唯一者にとって重要なのは、「今」この瞬間であり、過去の束縛や未来への不安から解放され、現在の自己の欲求に忠実に生きることです。
時間と所有
シュティルナーは、所有もまた時間と共に変化する動的なものであると考えました。唯一者は、自己の力によって所有物を獲得し、そしてまた、必要に応じてそれを手放すことができます。
重要なのは、所有物に執着することなく、常に自己の自由と独立を保つことです。唯一者は、所有物によって自己を規定するのではなく、所有物を自己の目的のために自由に使いこなす存在でなければなりません。