## シジウィックの倫理学の方法と言語
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シジウィックの倫理学の方法
ヘンリー・シジウィック(1838-1900)は、イギリスの功利主義哲学者であり、「倫理学の方法」(The Methods of Ethics)はその代表作として知られています。本書でシジウィックは、倫理学における主要な学説を批判的に検討し、自身の立場を展開しました。彼の方法は、直観主義と功利主義の要素を組み合わせたものであり、倫理的判断の根拠として「自己明白な道徳的原則」を重視しました。
シジウィックは、倫理学を、道徳的判断の妥当性を検証する方法論として捉えました。彼は、特定の道徳的信念を正当化するためではなく、倫理的推論の背後にある一般的な原理を明らかにすることを目指しました。そのために、彼は既存の倫理思想を体系的に分析し、それぞれの強みと弱点を明らかにしようとしました。
彼の分析の中心には、「直観」という概念がありました。シジウィックは、人間の理性には、道徳的に正しいことや間違っていることについての基本的な真理を認識する能力が備わっていると主張しました。これらの真理は、経験から導き出されるのではなく、自己明白なものとして捉えられます。
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シジウィックの倫理学と言語
シジウィックは、倫理的な概念の分析と言語の役割を重視しました。彼は、道徳的な議論における混乱や誤解の多くは、言葉の曖昧性や多義性から生じると考えていました。
例えば、「善」や「義務」といった基本的な倫理用語は、文脈に応じて異なる意味を持つことがあります。シジウィックは、これらの用語の多様な用法を注意深く分析し、それぞれの意味を明確に区別しようとしました。
彼はまた、倫理的な言説における感情表現の役割についても考察しました。道徳的な判断は、単なる事実の記述ではなく、感情や態度を伴うことが多いからです。シジウィックは、感情が倫理的思考に与える影響を認識しつつ、客観的な倫理的基準を確立することの重要性を強調しました。
シジウィックは、明確で正確な言語を用いることで、倫理的な議論の質を高め、道徳的な問題に対するより深い理解に到達できると信じていました。彼の倫理学における言語へのこだわりは、倫理的な概念を明確化し、道徳的推論の妥当性を厳密に検証しようとする彼の姿勢の表れと言えるでしょう。