## シェーラーの宇宙における人間の位置の話法
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シェーラーにおける「人間」の位置づけ
シェーラーは、著書『宇宙における人間の位置』の中で、人間を生物学的な存在としてのみ捉えるのではなく、独自の精神性を持つ存在として位置づけています。彼は、人間を他の生物と一線を画すものとして、「世界を開く存在」と呼びます。これは、人間だけが世界を対象的に認識し、その意味を理解することができるという点に由来します。
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「世界開放性」と「精神」
シェーラーにおいて、「世界開放性」は、人間が世界と能動的に関わり、その意味を理解する能力を指します。これは、単なる受動的な知覚を超えた、より高次の精神活動です。彼は、この「世界開放性」を可能にするものとして、「精神」という概念を導入します。シェーラーの「精神」は、物質や生命とは異なる、独自の領域に属するものです。
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階層構造と「衝動」
シェーラーは、宇宙を物質、生命、精神という階層構造を持つものとして捉えます。それぞれの層は、独自の「衝動」によって駆動されます。物質は物理法則、生命は自己保存や種の維持といった生物学的衝動に突き動かされます。そして、人間を含む精神を持つ存在は、「世界開放性」という衝動によって、世界を理解し、意味を与えるように駆り立てられます。
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「中心的なもの」と「周辺的なもの」
シェーラーは、人間の精神活動を、「中心的なもの」と「周辺的なもの」という二つの側面から分析します。彼は、「中心的なもの」を、意識の中心にある、直接的に意識されている内容と定義します。一方、「周辺的なもの」は、意識の周辺にあり、直接的には意識されていないものの、中心的なものを支え、影響を与える領域を指します。
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「世界内存在」としての「人間」
シェーラーは、人間を「世界内存在」と呼びます。これは、人間が世界から独立した存在ではなく、世界の中に「投げ込まれた」存在であることを意味します。人間は、世界との関係性の中で、自己を形成し、意味を見出していく存在なのです。