シェーラーの宇宙における人間の位置の評価
シェーラーの思想における「人間の位置」
マックス・シェーラー(1874-1928)は、現象学と呼ばれる哲学の潮流に大きな影響を与えたドイツの哲学者です。彼は、人間を他の生物から区別する独自の地位を明らかにしようと試みました。シェーラーにとって、人間は単なる生物学的進化の産物ではなく、宇宙における特別な位置を占めています。
「宇宙における人間の位置」の概要
シェーラーの主著『宇宙における人間の位置』(1928年)は、このテーマを探求したものです。彼は、人間を「開かれた存在」と特徴づけ、世界に対して意識を開き、その意味を問うことができる存在としています。他の生物は環境に縛られているのに対し、人間は精神的な能力を通じて世界を超越し、価値や理想を追求することができます。
人間の特別な地位:精神と世界開闢
シェーラーは、人間と他の生物を分ける重要な要素として「精神」を挙げます。精神は、単なる知性や意識ではなく、世界を客観的に把握し、自己を世界から分離して認識することを可能にするものです。この精神の働きによって、人間は世界から距離をとり、それを客観的に認識し、さらには世界に働きかけることが可能になります。シェーラーはこのような精神の働きを「世界開闢」と呼びます。
生命の階層と人間の位置
シェーラーは、宇宙を構成する存在を「生命の階層」として捉えます。この階層は、植物のような「衝動的生命」から、動物のような「本能的生命」、そして人間の持つ「精神的生命」へと至るものです。上位の生命は下位の生命を含むと同時に、独自の能力を持つとされます。人間は最高位の「精神的生命」を持つため、世界を意識的に把握し、倫理や文化を創造することができるのです。
感情と価値の秩序
シェーラーは、人間の精神生活において「感情」が重要な役割を果たすと考えました。感情は、私たちに世界の価値を直感的に理解させ、倫理的な判断や行動の根拠を与えます。彼は、客観的な「価値の秩序」が存在すると主張し、人間は感情を通じてこの秩序を認識できるとしました。