## シェリングの人間的自由の本質の思想的背景
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ドイツ観念論の伝統
シェリングの思想は、カントに始まるドイツ観念論の伝統の中に位置づけられます。カントは、人間の認識能力の構造を分析することで、物自体を認識することの不可能性を示し、認識の対象となるのは、あくまでも我々の感性と悟性によって構成された現象界であるとしました。
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フィヒテの主観的観念論
フィヒテは、カント哲学をさらに発展させ、自我の自己活動こそが認識の根拠となるとする主観的観念論を展開しました。フィヒテにおいて、世界は自我の活動の射程として捉えられ、非我は自我の活動に対する抵抗として位置づけられます。
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スピノザの影響
シェリングは、フィヒテの主観的観念論を批判的に継承しながら、一方で、スピノザの汎神論の影響も強く受けています。スピノザは、神と自然を同一視し、唯一の実体である神から、思考と延長という二つの属性によって、この世界が派生すると考えました。
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自然哲学の展開
シェリングは、初期において自然哲学を展開し、『自然哲学における観念論』などの著作を残しています。シェリングは、自然を精神の無意識的な段階と捉え、自然の中に精神の展開の過程を見出そうとしました。彼は、自然を力動的なものとして捉え、対立と調和の過程を通じて、自然がより高次の段階へと発展していくと考えたのです。