## シェリングの人間的自由の本質の力
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シェリングにおける自由の概念
シェリングにとって、自由は単なる選択の自由や外部からの強制の不在を意味するのではなく、むしろ自己決定と自己実現を可能にする、より深い内的能力を指します。彼は、人間の本質を「精神」と捉え、この精神が自己意識と自己決定を通じて自由を実現していくプロセスを重視しました。
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二元論の克服と自由の根拠
シェリングは、当時の支配的な思想であったデカルト的な心身二元論を克服しようと試みました。彼は、精神と自然を絶対的な対立関係として捉えるのではなく、根源的な同一性において結びついたものと見なしました。この立場から、自由は精神の恣意的な活動ではなく、自然の必然性と精神の自由意志が不可分に結びついたものとして理解されます。
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「悪」の概念と自由の葛藤
シェリングは、自由と密接に関連する概念として「悪」を考察しました。彼は、悪を単なる道徳的な悪ではなく、存在の根源に由来する、自由の必然的な対立項として捉えました。シェリングによれば、自由は常に悪へと転落する可能性を孕んでおり、この葛藤こそが歴史を動かす原動力となっています。
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芸術における自由の表現
シェリングは、芸術を自由の最も純粋な表現形態と見なしました。彼にとって、芸術は精神が無意識的な衝動と意識的な形成を調和させ、自由を形象化する営みです。芸術作品は、自然の必然性と精神の自由意志が織りなす調和の象徴として、人間の自由の本質を照らし出すものとなります。